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兄とのあの会話から数日後、久しぶりに婚約者と会う事になった。
私は婚約者から簪を貰った。
初デート(仮)の時に、紅玉ちゃんがつけているのに似ているやつだと思っていたあの簪である。

覚えていたのだ、この人は。
記憶力やべぇ。
あと、私は別に欲しいとは言ってないので、ぶっちゃけ喜べなかった。
しかし、貰えるもんはもらっておこう。
こういう時に、貧乏性が出てしまう。


「Aさんは、いつも勾玉をつけてますね」


桜餅を食べていた私に、婚約者がそう言った。
彼が言っているのは、帯紐に通している勾玉の事だろう

文字通り、肌身離さず毎日身につけている。


「この町に来る前に、知り合いから貰ったものです」


お寺で暮らしていた時間の方が圧倒的に長いはずなのに、先生達の声がもう思い出せないでいる。
先生はどんな声だっただろうか?
沙代はどんな声で私を呼んでいただろうか?
勾玉野郎は___


「ああ、そうなんですね。Aさんの家族に、そんな物を与える人なんて居ませんよね」

「……え?」


そんな物?
普段素直じゃない勾玉野郎が、わざわざ私のために用意してくれた物だ。
それを、こんな物呼び??

思わず笑顔が剥がれ落ちた。
そんな私を見て、婚約者は目を見開いた。


「あ、す、すみません。何か気に触ることを言ってしまいましたか?」


私はこの人をぶん殴りたい衝動を抑え、笑顔を貼り付ける。


「……そんなに趣味が悪いですかね?」

「あ〜」


婚約者は目を泳がせた。


「あまり良いとは言えないですね。Aさんにはその色は似合わないです」


おい勾玉野郎!
お前のセンス、全拒否されてるぞ!!

お寺に居た頃の私なら、笑いまくって勾玉野郎をバカにしていたのだろう。
しかし、今はその気力も無いし、婚約者の話を聞いてテキトーに相槌を打つ事しかできなかった。

心なしかイライラする。
何故だ……?
あっ!もしかしたら、ホルモンバランスが乱れているのかもしれない。

女の子の体はデリケートだもんね!
仕方ないね!


「……それ、外さないんですか?」


婚約者が勾玉を指さした。

は?
何で外さなきゃいけねぇの?


「御守りですので」


私は勾玉を手で押さえながら言う。

外さない。
意地でも外さない。

勾玉野郎に会った時、何か言われそうだし。


「……そうですか……」


婚約者は苦笑した後、話題を変えた。

最近、刀を携えた人を見かけるらしい。
世の中物騒である。
気をつける様に言われた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 獪岳   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:そうや | 作成日時:2020年6月7日 21時

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