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勾玉野郎が居ないし、布団が一組も床に敷いてない。

でも、先生が勾玉野郎は先に寝たって……
もしかして、先生の部屋で寝ているのか?

あれ?
でも私が夕方戻ってきた時、勾玉野郎の草履だけ、無かった___

私は慌てて外に出た。
玄関には、やっぱり、勾玉野郎の草履だけが無かった。


「獪岳〜」


勾玉野郎の名前を呼ぶ。
当たり前だが、返事はない。

お寺の周りをぐるりと一周回ったが、勾玉野郎は見つからなかった。
鬱蒼とした森へと足を進める。
もしかしたら、怪我をして歩けなくなったのかもしれない。

先生が口をすっぱくして「暗くなる前に、寺に戻る様に」って言ってるだろうが!
人攫いにあったらどうするつもりだ!!
あんなクソガキでも、そんな目にあって良い理由にはならない。

パキッと、木の枝を折る音が聞こえた。
割と近くだ。


「っ、A……!?」


今にも泣きだしそうな顔をした勾玉野郎が、おぼつかない足取りで私の元に歩いて来た。


「……A……」


勾玉野郎は泣きながら私に抱きつく。
私は後ろに倒れそうになったので、足を踏ん張って勾玉野郎を受け止めた。

私は混乱した。

強がりで、素直じゃなくて、口を開けば人の短所しか言わない様な奴が、泣いているのだ。
何年も一緒に居るのに、勾玉野郎が泣いている所を初めて見た。


「どうしたの?」


勾玉野郎の背中を撫でて、できるだけ優しい声で訊ねる。


「行くな、どこにも……動くな……頼むから……」



私の肩に顔をうずくめ、勾玉野郎はそう呟いた。

できないなぁ。
決まった事だし。
完全に私が悪いのだけど。

あれだ。
ゲームの説明文を読むのが面倒くさくて、ひたすらA連打していたら、いきなり選択肢が出てきてしまって、勢いに任せてそれを押してしまった感じである。

ツンが九割九分でデレがほんのひとつまみしかないこのクソガキが、いきなり泣きついて来やがったので、私はどの様に対応すれば良いのか解らない。


「獪岳、お寺に戻ろう。ご飯はできてるから。あ、でも先にお風呂に入らないといけないな」


勾玉野郎の背中をポンポンと一定リズムで優しく叩く。
勾玉野郎は、特に何も反応を示さない。


「……一緒にお風呂に入る?」

「入る」


即答だった。
マジか。冗談のつもりで言ったのに……

子供同士だし、まぁいいや。
私の精神年齢は、とっくの昔にババァなので!!

私と勾玉野郎は、手を繋いでお寺に戻った。
お寺に着く頃、勾玉野郎の涙は止まっていた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 獪岳   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:そうや | 作成日時:2020年6月7日 21時

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