嘲笑の彼 ページ42
【夢主目線】
静かに息を整えて心を鎮めた。
(大丈夫…。中原幹部に教わった事を…活用するだけ!ただ…それだけ!!)
この時ばかりは世界の時間がゆっくりと進んでいる様に感じた。
ソファに掛かる彼の右手を両手で掴んで捻りながらシートベルトを引くように上から下に引いた。
(……やった……!)
───しかし其れは単なる過信に過ぎなかった。
彼の手はするりと私の掌を躱してあろう事かその私の両手首を束ねて片手で持つ。
そうして其の儘掴み上げて壁に向かって放り投げた。
「………グッ……!」
背中を強く打ったものの外傷は無かったようで異能力が発動せず、此奴には傷一つ付かない。
私が壁を背にへたり込んでいると顔の直ぐ横に脚がめり込んだ。
─────ダンッッ!!
起立した状態でも彼との身長差は七十センチもあるのにも関わらず、私がへたり込んだとなると其の身長差はより歴然とする。
歯を食いしばりながら恐る々、視線を上げた。
安吾「……僕も舐められたものですね。」
其の目は誹りからくる嘲笑を伺わせるものでも無く、狂気じみた目でも無かった。
安吾「侮る無かれ。一見は仕事廃人の様に見えますがこれでも特務課の一員。特殊指導位は受けています。」
ただ此の哀れな私を蔑む其れ以外の情を感じさせない目であった。
助けを呼ぼうとも考えたが、探偵社員の皆さんは顔見知りとは云え、これからお世話になるのだ。
初日から迷惑は掛けられない。しかもこんなにも私情に絡んだ事案を……。
安吾「風の噂で聞いたのですが…どうやら異能力をお持ちになったとか。」
彼はそう言って自らの懐に手を入れた。
取り出したのは…万年筆……?
ペン回しをする様に万年筆を指で回す。
─────!!?
窓から差し込む日光を“其れ”が反射した。其の光が今でも酷く印象に残っている。
安吾「…護身用です。然し今回は別用途で使う事になりそうですが。」
万年筆の先がメスの刃に変わっていた。
「………は……あ、……。」
言葉にならない声が漏れてこの後自分の身に起こる事を覚った。
安吾「軍警に通告する前に是非一度、お目に掛かりたいのですよ。貴方の異能力を。」
すーっと首筋に無機質な光沢を放つ其れが近付いてくる。
ヒヤリと喉元に冷たい感覚。
互いの吐息が静かに互いの鼓膜を揺らした。
安吾「さぁ、抵抗してご覧なさい。今こそ貴方の正念場ですよ。」
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時