或るQ ページ24
【夢主目線】
私は今、悲しくもあり嬉しくもあった。
嬉しさというのはあの不器用な中原幹部が不器用乍に私を此処から出してくれる約束をしてくれた事。
私はそっと赤く充血しているであろう眼球を休ませようと瞼を閉じた。
只でさえ薄暗い地下牢で目を閉じれば光は全く感じたなかった。
しかも気味の悪い位に静かだった。
時折する音といえば何処からともなく水滴が垂れる様な音だけだった。
視覚、聴覚を閉ざした今、私の中の第六感とでも云うのだろうか。
何かの“気配”を感じ取った。
それは隣の地下牢だった。
私はゆっくりと立ち上がって数本の鉄格子で区切られた隣の地下牢を覗き込んだ。
其の何処までも続く様な深い闇の中には姿さえ見えない“何か”の気配を感じさせた。
然し何時まで経っても其の“何か”は姿を現さないので私は思い違いかと諦めて再び其の鉄格子を背にしゃがみ込んだ。
────スゥー………。
それは確かに聞こえた。今、今正に耳元で。
誰かが呼吸する音だ。息を吐いたのか吸ったのかは定かでは無いが。確かに聞こえた。
私は後ろに居るであろう其の音の主の姿を一目見ようとゆっくりと身体ごと後ろを振り返った。
「………何これ…。」
隣の地下牢とこの地下牢を区切る鉄格子に寄り掛かる様にして気味の悪い人形が置かれてあった。
先程までは無かった筈だ。私は恐怖心を煽られながらも好奇心から其の人形に手を伸ばした。
区切りの鉄格子に寄り掛かる其れは隣の地下牢に居る“誰か”の手によってついさっき置かれたのだ。
後、一寸程で其の人形に手が触れそうになった時だった。
不意に其の伸ばした腕の手首を強く掴まれた。
と同時に物凄い勢いで隣の地下牢の方に引っ張られたので、私は抵抗の余地無く体制を崩し前傾姿勢の儘、鉄格子に顔をめり込ませた。
───────ッ?!!!
顔にめり込む鉄格子の冷ややかな感覚と絶えず手首を掴み引き続ける手の感覚を感じながら薄ら瞼を開くと。そこには更に衝撃的なものがあった。
─────子供の顔だ。しかも満面の笑みの。
初めは自らの情緒不安定な気狂った精神が見させた幻覚だとさえ思ったのだが、“其れ”は確かに口を開閉させて声を発した。
?「───僕は新入りさんを何時もこうやって驚かすんだ。どう?びっくりした?」
心做しか星型の虹彩が夜空に輝く星の如く爛々と異彩な輝きを放っていた。
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時