リミット ページ47
【夢主目線】
太宰「でもこういう事は本命の人にやるものだよ。例えば、此の跡の人とかね。」
「あの之は……。」
父親に付けられました……とは言えない…。
太宰「君も年頃だからね。其の様な人がいてもおかしく無い。」
「…………。」
太宰「でもこういう跡は隠しておくのがマナーだよ。」
そう言って太宰さんは私の手から包帯を取ると残りの包帯を全て伸ばして、私の首に巻き付けた。
包帯を後ろに回す時に不意に顔が近付いてしまうのが恥ずかしくて目線をなるべく上げないようにした。
太宰「まあ、今は少しばかり幼く見えてしまう…………」
彼はそこまで言い掛けると突然顔を顰めて私の頬に手を伸ばした。
そうして優しく触れる。また離す。触れる。
其の動作を繰り返した。
私の羞恥心は遂に頂点に達し、耐えられくなって言った。
「な、何してるんですか!?」
太宰「何故だ…。本来私が君に指一本でも触れれば異能力が解けて…君の場合なら……姿が元に戻る筈だろう?」
前に夢野君が言っていた事だろうか。
異能力の根源となる物を触らなければ容姿は戻らないという。
其れが異能力の異端中の異端である呪術属性という異能……。其れが私に掛けられた異能力であると。
私が其れを太宰さんに説明した所、太宰さんは其の色を変えた。
太宰「……呪術属性だって?」
太宰さんは私の両肩をがしりと掴むと何時に無く真剣な眼差しで言った。
太宰「いいかい、Aちゃん。呪術属性は其の名の通り、異能力というよりかは圧倒的に呪いの類に近い。そうして其れが此処まで恐れられるのには訳がある。」
気付けば夕陽はすっかり沈み、やけに明るい月明かりが私達を照らしていた。
太宰「一つはちょっとやそっとの事では異能が解けないという点だ。ある物は根源を無効化したり、ある者は其の能力者本人の……命を絶たなければならなかったりする。」
太宰「そうしてもう一つは……、其の能力にはリミットがある事だ。リミットと言っても解けるという訳では無い。つまり…其の……手遅れという事だ。失われた記憶はもう二度と戻らない。」
「記憶が消える…?」
太宰「そう。即ち自我の喪失。狂う事すら許されない“無”の境地。其れがリミット。」
────コンコン。
突如部屋にノック音が響いた。
太宰「悪いが私が教えられるのは此処までの様だ。闇に戻る時間が来てしまった。」
太宰さんは素早く部屋の開けっ放しの窓に姿を消した。
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時