197話 ページ48
Aside
風に揺れる葉の音で目が覚める。
バッと飛び起きて辺りを見回すが、もうアイツの姿はなかった。
急いで時計を確認したが、そんなに時間は経っていないようだ。
せっかく見つけたのに。
何も出来なかったどころかいいようにされただけだった。
その事実が悔しくて、情けなくて、喉の奥がギュッと苦しくなる。
…違うだろ。
今やるべきことは悔やむことじゃない。
噛み締めていた唇を血が出る程腕で擦る。
アイツが言ってたことを思い出せ。
【止められてる】
【時じゃない】
【いるんだって？】
まるで誰か他に指示を出している人間がいるかのような言葉。
そして、アイツじゃない、私の動きを止めたあの力。
火黒に協力している奴がいる。
…いや、火黒が誰かに協力しているのか。
火黒は孤独にこだわりがある奴だ。
好んで群れるようなことはしない。
それでも指示を聞いてるということは、黒芒楼の時みたいに、その協力者がアイツの美学に刺さったか、【面白そう】だったからだろう。
とにかく、ソイツをどうにかしないと火黒を殺せない。
そんな焦燥に駆られながらオンボロ寮に向っている途中、立ち尽くしてなにやらボソボソと呟いているユウを見つけた。
見るからに様子が可笑しかったので声を掛けてみれば、驚いて転びそうになる。
それを支えて顔を見れば、ユウの目からポロポロと涙が零れ出していた。
それはまるで塞き止めていた感情が溢れ出したかのように止まらない。
捨てられた仔犬のような、迷子になった幼子のように泣くユウを安心させるように笑って抱き締める。
大丈夫。
大丈夫だよ。
そう言いながら力強く抱き締める。
ごめんね、ありがとう。と泣きながら零すその言葉に私は心の中で否定する。
違うよ、ユウ。
本当は、私も今すごく泣きそうだったんだ。
あんなにたくさん修行をしてきたのに、微塵も通じなかった。
悔しくて、情けなくて、涙が溢れてしまいそうだった。
泣いてしまいたかった。
でも、それを堪えて、押し込んで、仕舞込んだ。
強くいなきゃいけない。
泣いてる暇はない。
そんな風に言い聞かせて押し殺した。
だから、ユウの目から涙が溢れた時
まるでユウが私の代わりに泣いてくれているように感じた。
実際はそうじゃないことは分かってる。
勝手な想像での押し付けでしかない。
それでも、私はそれに救われた。
だから、
『…ありがとう』
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のと(プロフ) - +ちっくさん» どクソ重シリアスが好物なので泣いてくださって嬉しいですヽ(｡･ω･｡)ﾉ私もこのまで読んでくださった+ちっくさんが大好きです！！ (2021年5月12日 22時) (
レス) id: 2cc152cab9 (このIDを非表示/違反報告)
+ちっく(プロフ) - 泣かせんなよおおお！！。゜(´∩ω∩｀)゜。結界師とか懐かしいって思って読んでたのになんだよこれぇぇえうわあああ！好きだあああ！ (2021年5月12日 18時) (レス) id: 0cbf2f128f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のと | 作成日時：2021年1月15日 16時
