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「ぁ…」
長い眠りから意識を覚醒させた視界に広がったのは真っ白な天井。視界の端に映るのはぽた、ぽたと液体が1滴ずつ落ちていく点滴用パック。腕がじんわりと熱を持ち、視線を動かせば針とチューブが医療用テープで肌に止められていた。
枯れた喉から絞り出されたのは空気に掻き消されてしまいそうな程に弱々しい小さな声。いの一番に反応したのは点滴を打っている手に自分の手を重ねた友人の姿だった。
「あっ…お、起きたぁ！Aのお母さん、Aが起きましたよ！う、うぅ…！！こんのぉお馬鹿ぁぁあ〜！！もう、あれだけ言ったのにぃ…！全部無視しやがってぇ〜！！倒れたって聞いた時、ほんと、心臓口から出てくるかと思ったよ！」
「ここ、病院だから静かにね？…A、おはよう。気分は…どうかな。優れてはいないと思うんだけど…貴方、過労で倒れたのよ。職場の…Aが所属していない他部署の方々から色々と聞いたわ」
駅で倒れた私は、すぐに病院へ運ばれた。
持ち物で持っていた保険証から職場へ連絡が入り、また職場から母へと連絡が入った。同時に、私を心配してくれていた友人もどこから情報を仕入れたか分からないが倒れたと聞いた瞬間に、早退を使って私の見舞いにきてくれたという。
2人を見た瞬間、私は大号泣をした。
今迄溜めていた分を吐き出すように、涙を零した。大人になって、子供のように声を上げて、幼稚に泣くなんて思いもしなかったけれど、2人は背中を擦りながら話を聞いてくれた。
溜め込んでいたメッセージの数の量を上回るような話を、うんうんと真正面から向き合い、受け身になって聞いてくれた。
「そいつなんなん！？ただのパワハラクソ上司じゃない！」
「A、話してくれてありがとうね」
仕事ではずっと否定され続けた私を、2人は肯定してくれた。私よりも怒ったり、心を痛めたりしてくれた。
度重なる叱責で自分に価値なんてないと思っていた。
けれど、2人はそんな事ないと首を何度も振って否定してくれた。
「心配かけて、ごめんなさい」
「自分の限界知らな過ぎる！あんたの大丈夫ほど信用出来ないものはない！今後、辛い事悲しい事悩み事病み事、全部アタシにぶちまけなさいね！でも今は良く吐き出した！偉い、A！」
「今後のことは考えず、今は療養しましょう」
2人は私の帰る場所となって、ずっと待っててくれた。
それが、分かった瞬間にまた涙が止まらなくなった。
私に、帰る場所はあったんだ。
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作者名：こりん
| 作成日時：2024年3月30日 0時
