検索窓
今日:152 hit、昨日:1,547 hit、合計:364,826 hit

◆ on a quiet night 3 ◆ ページ44

Aの陶器のような肌は背中だけ違った。
何かに焼かれたような惨い火傷痕に覆われており、赤黒い傷が彼女の背中に刻み込まれている。だるまから見ても何とも痛々しい痕であり、先程の有頂天な気分は自然と消えていく。


「あまり覚えていないんですけど、らっだぁを手伝ってた最中に爆発から治療中の人を庇って負ったみたいなんです。もし、治療中の人に当たってたら本当に危なかったようで…だから、私は誇っていい勲章だと思っているんですが傷を見た周りの人からは…あまり好評ではないんです。でも、確かに…私もちょっとグ ロテスクかなって思ってるぐらいなんで仕方ないんですけどね」


乾いた笑いが重く沈みこんだ部屋に染み込む。
自ら、火傷跡を見せる事がなかった為、次に掛けられる言葉が恐ろしくて堪らない。否、これはだるまさんだから、こんなにも肩が震えて恐怖を覚えているのだろうか。


「…だから、やめた方がいいですよ。私なんて」


下手くそな笑顔を浮かべながら、今だけは平和の街を見下ろす。


誰がどう見ても酷い火傷跡だから受け入れられるわけが無い事は分かってる。


『ねぇ、見た?…ふふ、あんな背中じゃ、抱かれる男の人の方が可哀想よね。事故に遭ったのは可哀想だけど…』

その時、担当していた看護師は影で私の背中を嗤った。
たまたま通り掛かって聞いたひなのさんが厳しく叱っていたが、それでもその言葉は深く胸に突き刺さった。


『酷い背中だねぇ。まだ若いのに…可哀想にねぇ』

処置を受けている時、同室だった50代の女性からの言葉だった。その言葉は同情と哀れみが含まれており、思案するのも不要な私の未来に対して、勲章を『可哀想』と言った。


『気持ち悪い!!』

知ってた。だが、その言葉が一番深く突き刺さり、抜こうとすればするほど返し部分が胸をより抉った。



本当は見せたくなかった。
けれど、こうでもしないとあの人は…何度も、告白をする。決して、首を縦に振らない告白をずっとさせるのはあまりにも酷だから…ここで諦めて貰うしかないだろう。


「かっけぇ、A。ほんと、かっけぇ」


タオルケットが背中から掛けられ、そのまま優しく抱き締められる。


ねぇ、どうして。
こんなにも酷い傷をなんで否定してくれないの?


「…背中、見してくれてありがとう。本当は嫌だったろうに…勇気出してくれてありがとな」


ねぇどうして…優しい言葉を掛けるだけで私を嫌いになって、くれないの?

◆ on a quiet night 4 ◆→←◆ on a quiet night 2 ◆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (279 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1025人がお気に入り
設定タグ:cr , drm
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます!こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります! (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです!!更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こりん | 作成日時:2023年10月29日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。