◆ No one matters but you 8 ◆ ページ26
「いたっ」
「動かないで」
いつの間にか血が流れていた場所に消毒液が染みた消毒綿球が当てられ、傷口に染みる痛みに思わず身体が跳ねるもセリーさんの言葉で姿勢を正す。
だるまさんが運転する高級車の後部座席で手当をして貰いながら、一旦の退避場所として彼らが所有するタワマンへと向かっていた。
「お腹、痣になってる」
「脂肪で衝撃を吸収したと思ったんですがね」
「笑い作らなくていい」
セリーさんに突っぱねられてしまい、車内は再び静寂に包まれる。
こんなお通夜みたいな雰囲気だと少しでも和ましたくなると言いますか助けてくれた人がずっと沈痛な面持ちでいるのが、嫌だと言うか。
「あいつ、何？」
「元彼です。お金が欲しいって言われて。断ったらあのザマです」
「…ボス」
「分かってる。…A、他に何か言ってなかった？」
「特には…薬を使用してて発言が支離滅裂で」
「俺らに関して、何か言ってなかった？」
俺らは必然的にGODFAMILYの事だろう。
発言には出てきて、間接的に関わってしまったがGODFAMILYとは無関係だ。特に追求するような事も言っていない。
「いえ、何も」
「そっか……よし、着いた。上に凛月さんおるからセリー、Aを運んで戻ってこい。アルスさんにも声掛けてるから救急は大丈夫」
「ん」
「だるまさん、何処に行くんですか…？あ、ちょっと、セリーさんっ。私歩けますから…！」
細腕で軽々と姫抱きするセリーさんはだるまさんとアイコンタクトを取るとそのままタワマンへと入っていく。運転席から私を見送るだるまさんはほっぺに貼られたガーゼを見るなり、眉を顰め憂いた表情を浮かべた。
動作に対して全く揺れが無いエベレーターは最上階へと辿り着く。通路を少し歩けば、玄関扉を開けたまま向かい入れてくれる凛月さんの姿があった。
初めて足を踏み入れるタワマンの中。
お洒落な内装に感慨する間もなく、セリーさんは近くのソファに私を寝転がす。
入れ替わるように凛月さんが傍に寄り、様子を伺った。
「怪我は…！」
「大丈夫です。セリーさんが治してくれましたし」
「絶対安静して。あと任せた」
「あの、何処に行くんですか…？」
「…知りたい？」
嫣然な微笑みを湛え、妖しくも惹かれる雰囲気を一瞬で作り出すセリーさん。人差し指で顎下に触れ、上を向かされる。
知ってしまえば、私は元の生活には戻れないのだろう。
かぶりを小さく降れば、「残念だ」と言い残して、身を翻した。
◆ No one matters but you 9 ◆→←◆ No one matters but you 7 ◆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1025人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (
レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです！ありがとうございます！こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります！ (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです！！更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こりん
| 作成日時：2023年10月29日 17時
