◇ You mean the world to me 8 ◇ ページ17
だるまさんが上から退いた瞬間、硬直した全身の筋肉が緩み出す。ぽろぽろと零れる涙を手の甲で拭っているとだるまさんは白いタオルをぽんっと頭に乗せて渡してくれた。
｢ありがとうございます…すみません｣
｢俺が泣かせたから謝らんといてよ｣
鈴の音のような優しい声色に漸く、肩の力が抜けた。
ゆっくりと身体を起こし、渡されたタオルで汗や涙を拭う。
｢もし、俺じゃない奴に襲われてたらもっと酷いことになってた。…普通に歩くだけでその危険は付き纏う。さっき言ってたことは嘘じゃない。Aが危険な目に合うぐらいならここにずっと閉じ込めてた方がいいって今も思ってるよ｣
｢…ほんと、優しいですね。1人でも養うのは大変なのに｣
｢優しいとは違うけど…養うだけでうちにいるなら、仕事辞めて全然来ていいけど。何でも貢ぐよ？欲しいモンあるなら言ってくれれば買うよ？全部｣
｢お気持ちだけで遠慮させていただきます｣
この人が言うこと、全部現実になっちゃいそうで怖い。
｢A、立てる？家まで送るわ｣
｢……｣
｢どうした？｣
｢お恥ずかしい話なんですがその…腰、抜けちゃって…立てなくて…ちょっとだけ、待って貰っていいですか｣
腰を抜かすという体験をしたのは人生で初めてだ。
拉致から監 禁までの手際が完璧すぎたしギャングのだるまさんが怖過ぎて、正直今もどきどきしている。
…駄目だ、あの時のだるまさんを思い出してしまう。
凄く怖くて汗が滝のように出てきて、肺が痛い程に呼吸が乱れていたのに。
今は熟れいた林檎のように顔が真っ赤になってる自信しかないし隣にいるだるまさんを何故か、直視出来なくてずっと俯いている。
｢A｣
｢はい？｣
名前を呼ばれ、顔を上げると_______心臓が、止まった。
比喩なんかじゃない。本当に心臓が一瞬だけ止まった。
秒針の音が聴こえる。
でも、それ以上に動き出した心臓の音が煩い。
長い睫毛から覗く瞳に意識が囚われたような感覚に侵されながら、ゆっくりと離れていく顔をただ見てるだけしか出来ない。
｢……な、んで？｣
｢俺はAに優しくありたいけどすっごい悪い男でもあるから。これで今回は許したるけど次は無いよ｣
そう言うとだるまさんは離れ、部屋の鍵を開けると出ていく。
｢今日はそこで寝ていいよ。あ、ごめん…アルスさん、あと頼んでいい？俺ちょっと行くところあるから｣
自分からキスした癖に。
なんであの人、耳まで真っ赤なんだろう。
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うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (
レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです！ありがとうございます！こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります！ (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです！！更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こりん
| 作成日時：2023年10月29日 17時
