陸 ページ6
・
カタカタ、という音と、
ふわっといい匂いがする。
「ん…」
朝だ。
目を覚ました時には、隣に冨岡さんはいなかった。
…遊女だった時は、お客が起きる音で必ず起きたのに。
全然気付かないくらい、寝てしまっていた。
私が重たい身体を起こすと、
既に身なりを整えた冨岡さんが、机に食器を並べている。
義「…起きたか。おはよう。」
「おはようございます…。
すみません、熟睡してしまっていました…。」
いつも、どこか冷たく寒い布団で眠っていたから…
あんなにポカポカしたお布団で眠った昨日、
かなり疲れが取れているような気がした。
なにより、視界がぼやぁっとしていない。
いつも寝不足だったんだな…。
義「…よかった。朝餉が丁度できたところだ。」
お料理も教えて貰うために早く起きようと思っていたけれど…
目の前に広がるのは、豪華な食事。
「美味しそう…。」
味噌汁に、
焼き鮭に、
漬物。
それに、麦米だった。
私はのそのそと布団から這い出ると、
冨岡さんの座る反対側に、腰を下ろした。
義「…いただきます。」
「いただきます。」
ドキドキしながらの、
1口目。
お味噌汁を飲んだ。
「…美味しいっ…！！」
温かくて、優しい味がする。
濃すぎず、薄すぎず、
鰹節の香りがふんわりと香る、お味噌汁だった。
美味しくて美味しくて、冨岡さんの方を見ると、
冨岡さんは頬にお米を付けながら口いっぱいにご飯を食べていた。
「冨岡さん…お米ついてますよ…！」
義「え…あぁ、ありがとう」
いつもしっかりしていて、冷静な冨岡さんの新しい一面だ。
少し、可愛い。
冨岡さんは頬のお米をとると、
また口いっぱいにご飯をいれて、食べている。
義「…今日、着物を買いに行こう」
「え？」
着物？
いや、私お金ないし…。
そもそも、今着ている着物で、全然十分だ。
まぁ…
遊廓のものだから、少し人目を引くけれど。
義「…それは、目立つ。」
冨岡さんが…
目立つこと、お嫌いなのかな？
それなら、買い換えるのがいいんだけど…
「…至れり尽くせり…申し訳ないです。」
身請けから、朝餉まで作って貰って…
「私、何も出来てませんし…。」
でも冨岡さんは、また頬にお米を付けながら、首を傾げた。
義「…俺の隣にいるだけでいい。気にするな。」
私は…
その言葉が恥ずかしくて、俯いてしまった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さき - こちらの冨岡さんが理想の冨岡さんすぎて。何度も読んでます。続きが読みたいです…！ (2021年2月1日 23時) (
レス) id: 1a1bc3817e (このIDを非表示/違反報告)
冨岡義勇が大好きな人 - もう更新されないんですか？更新楽しみに待ってます。いままで見た鬼滅の刃の作品で1番です！ (2020年5月2日 10時) (レス) id: eedc890ee9 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 鬼滅の作品で一番好きです。続き待っています。 (2020年4月27日 6時) (レス) id: 333fde5e7d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - とても面白いです！！大変だと思いますが更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年2月2日 21時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - めっちゃ面白いです！！更新楽しみにしてます♪ (2020年1月17日 1時) (レス) id: 4dded7b614 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽ。
| 作成日時：2019年12月24日 23時
