廿弍 ページ22
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義「……ダメだ。」
「え…?」
しまった、と思った。
Aは、今新しいことばかりを目にしていて、なんでも受け入れてしまうような状態だ。
そんな時に、触れてみたくなる、など言うべきではなかった。
言葉の選択を間違ったのは、俺でもわかる。
義「……Aに触れるのは、Aが俺を想ってくれてからと決めている。」
抱き締めたり、口吸いをしたり…
そういうことは、今のAとして、傷付けてしまいたくない。
後悔させたくは、ない。
俺は、キッパリと断り、眠ろうと布団に潜ろうとした。
…が、その時。
Aが、俺に後ろからぎゅっと抱きついた。
「…貴方に触れて欲しいと思うのは、恋じゃないんですか…?」
ドキドキ、Aの心臓の音が聞こえる。
…もちろん、俺の心臓も鼓動が早くなっている。
そりゃ、好いた者に抱き着かれて、緊張しない男などいない。
でも…A、それはきっと違う。
義「…まだ3日しか経っていない。」
きっと、外の男は俺しか知らないから、俺に恋していると勘違いしているだけだ。
「…恋に落ちる時は、一瞬でも落ちます。」
その言葉に、胸を刺された気分だった。
…俺は確かに、Aに見初めたのだが…。
俺は、元々色んな人を見てきて、関わってきた中でAに見初めたが、
Aは違うだろう?
義「…Aは外の世界を知らなすぎる。」
俺の言葉に、Aの抱き着く力が少し強くなるのを感じる。
そして、俺の肩に頭を預けるように乗せると、小さな声で、でも力強く俺に伝えた。
「…外の世界を知ることが、貴方以外の方に恋をするということならば…
私は、外の世界なんか知りたくないです。」
……どうしてAはいつも、俺の心をくすぐるのか。
この3日で、俺はなにかAにしてやれたことがあったか?
もっとしてやりたいことは沢山あるし、
俺をもっと知ってからでも遅くない。
義「…気持ちは伝わっている。」
俺に心から感謝してくれているその気持ちだけで、十分だ。
ただ…生き急ぐな。
Aには、これからもっと沢山の自由な時間がある。
沢山の人と出会って、色んな価値観を目の当たりにしていくだろう。
義「…結論を出すには、まだ早すぎる。」
俺は、Aが俺に回したその小さな手に、己の手を重ねた。
ゆっくりと、丁寧に…
俺の気持ちも、伝わるように。
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さき - こちらの冨岡さんが理想の冨岡さんすぎて。何度も読んでます。続きが読みたいです…! (2021年2月1日 23時) (レス) id: 1a1bc3817e (このIDを非表示/違反報告)
冨岡義勇が大好きな人 - もう更新されないんですか?更新楽しみに待ってます。いままで見た鬼滅の刃の作品で1番です! (2020年5月2日 10時) (レス) id: eedc890ee9 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 鬼滅の作品で一番好きです。続き待っています。 (2020年4月27日 6時) (レス) id: 333fde5e7d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - とても面白いです!!大変だと思いますが更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月2日 21時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - めっちゃ面白いです!!更新楽しみにしてます♪ (2020年1月17日 1時) (レス) id: 4dded7b614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽ。 | 作成日時:2019年12月24日 23時