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ニュースのおじさんは今年は暖冬です、って言ってたのに。
いつの間にか肩に髪に、雪が降り積もる。
喜多川学園の正門前。
その白い
午後5時。学校は休みのはずだけれど、奥からベルの鳴る音が遠く聞こえてくる。
暗さを感知したのか、あるいは時間で決まっているのか、ぱっと白いイルミネーションが点き始めた。
白い石畳を誘導するかのように。こっちにおいでって言っているみたいに、無数の丸いあかりが瞬いている。
でも今日は許可を取っていないから、部外者の私はここで待ち伏せするしかない。
『綺麗だな…』
ただでさえ白い学園なのに、雪まで降って来るなんて。
視界が白い。
空から雪がはらはら優しく落ちてくる。
…それから、ちょっと寒い。
ぐるぐるで酸素不足の心臓が落ち着いて、走ってかいた汗が冷える感覚がした。
チョコがとける心配はないけれど、私が風邪を引くかもしれないな。
私、よく考えたらものすごく無鉄砲なことをしてる。
約束なんかないのに、まだ学校にいるかもって言葉だけを頼りにここまで走って来て。
ここからは校舎が見えないから、生徒会室に残っているかも分からないのに。
…そもそも、井上くんにしてみたら迷惑かもしれないのに。
頭もぼうっとして、判断が出来ない。
雪が視界を邪魔して狭い。
「…え」
井上くんの声が聞こえた気がしたけど、多分気のせい。
「…何してんのお前」
『あ…井上くん』
気のせいじゃなかった。
雪の向こうに、刺すような視線の井上くんが見える。
白いコートを着て、首元からちらっとだけ赤いネクタイをのぞかせて、エンジ色のチェックのパンツでまっすぐ歩いて向かってくる。
「何してんの」
『うん…』
最初に見た赤いモミジの向こう側にいた井上くんを思い出す。
…あの時、井上くんは綺麗だった。
赤いモミジのなかの井上くんは、綺麗で儚かった。
すごくかっこよくて綺麗だった。
でも、それだけじゃなくて。
刺すみたいに強い目で見てくるけど。たまに意地悪なことも言うけど。
照れ屋で不器用で優しいって知った。
私のことを守ろうとしてくれた。
きらきらとぎらぎらの井上くん。
そんな井上くんに、私は会いたいって思ってた。
会いたくて会えなくてもどかしくて、気持ちが制御できなくて。
夢中で走って、
…いま、会えた。
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冷麦(プロフ) - みちゃこさん» みちゃこさん、コメントありがとうございます。好きと言ってくださって嬉しいです！感謝です！ (2020年3月16日 15時) (
レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
みちゃこ(プロフ) - このお話大好きです。これからも更新頑張って下さい！ (2020年3月16日 0時) (レス) id: b50848dd48 (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - おかゆちゃんさん» おかゆちゃんさん、コメントありがとうございます！きゅんきゅんしてくださって、素敵な感想を寄せてくださって、本当に嬉しいです…！励みになります！ (2020年2月23日 0時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆちゃん(プロフ) - こんなにきゅんきゅんするお話に出会えて感動してます（ ; ; ）登場人物全員かわいすぎる…！本当に評価が一度しか出来ないのが悔やまれます(>_<)これからも素敵なお話楽しみにしてます！ (2020年2月23日 0時) (レス) id: a7174925fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷麦
| 作成日時：2020年2月8日 17時
