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作間くんが出会い頭で驚いていたのは、きっと今日が土曜日だから。
4月から5ヶ月間通ったこの花屋さんだけれど、入荷日を教えてもらってからは水曜日の閉店前にしか来た事がないから。


そうやって何度も足を運んでいて、何度も花を受け取っているのに、私はさっき教えてもらうまで作間くんの名前を知らなかった。


いつもの花屋さんの綺麗な顔の男の子。
そのくらいの認識。


こうして改めて名前を教えられて、少し申し訳なかったかな、そう思う。
けれど接客業ならよくある事だろうし、きっと彼も気にしてない…よね。




そう言えば、作間くんが花言葉を教えてくれるようになったのはいつからだったろう。

確か…6月頃にピンクのカラーを買った時だ。長くて太い茎の、服の(えり)みたいなかたちの花。
手元のメモを見ながら、唐突に教えてくれたんだった。そしてあの頃から「お客様」から「お姉さん」に呼び方が変わったんだった。


あの時カラーの花に長い指を添えて優しく持った作間くんは、目を伏せながら少し恥ずかしそうにして、こう言っていた。


「ピンクのカラーの花言葉は…情熱、です」








いま私の狭い部屋のガラスの花瓶には、白いトルコキキョウを活けてある。
3日前の水曜日の夜に作間くんから買った花。いつも通りたった一輪の花。

「花言葉は、すがすがしい美しさ、優美…希望、です」
そう教えてくれた作間くんは、茎の切り口に水を含ませたキッチンペーパーを巻きながら、優しく笑っていた。
薄くて繊細なフリルで出来ているかのような花びらのトルコキキョウを持つ作間くんを見ながら、
綺麗な長い指をしてる、そう思った覚えがある。


帰り道花言葉を(そら)んじながら、希望っていい言葉だなって思いながら、白い花に目をやっては嬉しくて心を弾ませた私。

あの日に帰りたい。水曜日に。
振られる前の楽しかった日に。








まだ花を買うタイミングではないけれど、
こうやってお店の前まで来てしまったし、
作間くんに声を掛けてもらったし。


誕生日に無様に振られてどこをどう歩いたのかも分からない、
それでいて涙ひとつぶも流れない、凝り固まったくせにぼろぼろの私のこころを、
慰めるような花を買ってもいい。


ううん、そんな花が欲しい。

花にはそういう優しさがある。



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冷麦(プロフ) - bさん» コメントくださってありがとうございます!大好きと言ってくださって嬉しいです。しかもきらきらの形容詞をたくさん使って優しい言葉をくださって…恐縮しきり、です…!本当にありがとうございます! (2019年8月31日 22時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
b(プロフ) - この雰囲気好きだな、と思って読み始めたら、まさかの大好きな冷麦さんの小説と知ってびっくりです。どのお話も美しくて爽やかで清潔な感じの、冷麦さんの書く文章が好きです!楽しみにしています! (2019年8月31日 12時) (レス) id: 3cd053490c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冷麦 | 作成日時:2019年8月31日 9時

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