第五十三話 ページ3
月島side
清潔さを表す純白に、どこか落ち着かなく感じる薬品の匂い。
これまた白いシーツの上で攻防戦を繰り広げるのは二階堂。
「何の騒ぎだ月島軍曹」
「鶴見中尉殿！二階堂がモルヒネを瓶ごと盗み、隠れて自分で打ちまくっていたのです！」
モルヒネ。アヘンから抽出される鎮痛剤で、強力な依存性がある。
モルヒネを精製するとヘロインになる。
「二階堂ダメだぞ！お医者様の言う容量を守らないと…」
「返してッ」
幼児退行した二階堂は手が付けられない。
腐っても軍人、発揮される力は凄まじく、医者も看護婦も手を焼いている。
こんな時A少尉殿ならどうしただろうか。
今は居ない麗しの将校を思い起こす。
安眠作用があるともっぱらの噂である、あの心地よい声で二階堂をなだめてくださるのではないか。
いや、『それはお前の仕事だろう月島』とあまり動かない表情に僅かな面倒臭さをのせて答えるに決まってる。
今は俺が癒されたい、そう思いながら二階堂との攻防戦を続けていた。
「鶴見中尉殿、家の前に誰かいます。…もし…どちら様？」
「私が何者かとな？私は君が肩に担いでいる小銃をつくった者であるッ」
「これはこれは有坂殿。お待たせして申し訳ない」
敬礼と共に迎えたその人は、とんでもなく偉い御方だ。
天才的銃器開発者…陸軍中将有坂成蔵
三十年式小銃は別名『有坂銃』とも呼ばれ、開発した有坂は日露戦争を勝利へ導いた影の功労者と言われた。
有坂中将が鶴見中尉に会いにわざわざ小樽までいらっしゃるとは…全くこの人は底が知れん。
「そういや鶴見くん、寒冷地に適したケシの栽培は軌道に乗ったかね？」
「農地を広げるべく金策に走っております」
「アヘンは儲かるよ！今英国が国際世論に圧されてアヘンから手を引き始めてるからね。満州のアヘン需要を一気に英国から奪い取れるよ」
「有坂殿！ケシ栽培の話はどうか内密にッ」
「最新の国産銃器を持ってきた。部下の南部君が開発した三八式機関銃と三八式歩兵銃だ」
「美しい…美しさがこの銃の機能を物語っている。売れますよこの銃は…！」
三十年式歩兵銃をベースにした三八式歩兵銃は世界的にも優秀と評価され、後の第一次世界大戦では大量に輸出される、大成功した『商品』だった
「『そうあれかしと作られた物は、何物よりも美しい』そう言った彼に是非ともこの歩兵銃を試して欲しいのだがね…今日はAくんは一緒じゃないのかい？」
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プスメラウィッチ(プロフ) - 続きの更新頑張って下さいね😆応援しています。 (2月14日 11時) (
レス) @page5 id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は尾形百之助オチですか？できれば尾形百之助オチでお願い出来ますか？後、尾形百之助は死なないで欲しいです。尾形百之助と夢主ちゃんを幸せに欲しいです。お願いします🙏 (2023年1月17日 20時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
メルテア(プロフ) - 何故こんなに低評価が押されているか俄にも信じ難いですがとても面白くここまで一気読みしてしまいました。素敵な作品ありがとうございます。 (2023年1月11日 15時) (レス) @page4 id: 3e70dcadbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜彩 | 作成日時：2021年4月29日 23時
