第110話 ページ10
ハリーside
「壊れて残念だったわ」
誰にも予言の内容を話していない。
自分が殺すか殺されるか、それ以外に道は無いということを皆に話したら、どんな顔をするか…
僕はまだその顔を見るだけの気持ちの余裕がなかった。
ハグリッドに会いにいくと言って医務室を後にした。
誰かと一緒にいたいのかどうか、僕にはよく分からなかった。
玄関ホールへの大理石の階段の最後の一段を下りた丁度その時、右側のドアからマルフォイ、クラッブ、ゴイルが現れた。
そこはスリザリンの談話室に続くドアだ。
双方の足がはたと止まった。
聞こえる音と言えば、開け放した正面扉を通して流れ込む校庭の叫び声、笑い声、水の撥ねる音だけだった。
誰か先生の姿がないかどうか確かめてマルフォイが低い声で言った。
「ポッター、お前は死んだ」
「変だな、それなら歩き回っちゃいないはずだけど」
「ツケを払うことになるぞ。お前のせいで父上は…」
「そうか。今度こそ怖くなったよ。お前達三人に比べればヴォルデモート卿なんてほんの前座だったな」
「何様だと思ってるんだポッター。見てろ。お前をやってやる。父上を牢獄なんかに入れさせるものか」
「もう入れたと思ったけどな」
「吸魂鬼がアズカバンを棄てた。父上も、他の皆もすぐ出てくる」
「ああ、きっとそうだろうな。それでも、少なくとも今は連中がどんな悪かって事が知れ渡った」
マルフォイの手が杖に飛んだ。
しかし、僕の方が早かった。
マルフォイの指がローブのポケットに入る前に、もう杖を抜いていた。
「ポッター！」
玄関ホールに声が響き渡った。
スネイプが自分の研究室に通じる階段から現れた。
その姿を見ると、マルフォイに対する気持ちなどを遥かに超えた強い憎しみが押し寄せるのを感じた…
ダンブルドアが何と言おうと、スネイプを許すものか。
「何をしているのだポッター？」
「マルフォイにどんな呪いをかけようかと考えているところです先生」
「杖をすぐにしまいたまえ。十点減点。グリフィ…ああ、点を引こうにも、グリフィンドールの砂時計には最早点が残っていない。それなればポッター、やむを得ず」
「点を増やしましょうか？」
マクゴナガル先生が丁度正面玄関の石段をコツコツと城へコツコツと城へ上がってくるところだった。
タータンチェックのボストンバッグ片手にもう一本の手で杖に縋ってはいたが、それ以外は至極元気そうだった。
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作者名：夜彩 | 作成日時：2023年2月26日 15時
