第92話 ページ42
ハリーside
何列も並んだ机の間の狭い空間を、夢で見たのと同じように光の源に向かって進んだ。
釣鐘を通り過ぎ、その裏にある唯一の扉を開くと、僕達はそこに着いた。
教会のように高く、ぎっしりと聳え立つ棚以外には何も無い。
棚には小さな埃っぽいガラスの球がびっしりと置かれている。
じわじわと前に進み、棚の間の薄暗い通路の一つを覗いた。
何も聞こえず、何一つ動く気配もない。
「九十七列目の棚だって言ってたわ」
「杖を構えたままにして」
延々と伸びる棚の通路を時々振り返りながら、全員が忍び足で前進した。
僅かな物音でも聞き逃すまいと、僕は耳をそばだてた。
シリウスは今、猿轡を噛まされているのか、気を失っているのか…
「九十七よ！」
全員がその列の端に塊まって立ち、棚の脇の通路を見つめた。
そこには誰もいなかった。
周辺の棚を調べてもシリウスはいない。争った跡さえない。
ここにいるはずだ。ここで、僕はシリウスを見たんだ…
「ハリー？これを見た？これ、君の名前が書いてある」
ロンが指さす先に、長年誰も触れなかったらしく、随分埃を被っていたが、内側からの鈍い灯りで光る小さなガラス球があった。
僕は前に進み出た。
ロン程背が高くないので、埃っぽいガラス球のすぐ下の棚に貼り付けられている黄色味を帯びたラベルを読むのに、首を伸ばさなければならなかった。
およそ十六年前の日付けが、細長い蜘蛛の足のような字で書いてあり、その下には『S.P.T.からA.P.W.B.Dへ 闇の帝王そして(？)ハリー・ポッター』と書いてある。
「ハリー、触らない方がいいと思うわ」
「どうして？これ、僕に関係のあるものだろう？」
「触らないで、ハリー」
「僕の名前が書いてあるんだ」
ハーマイオニーに加え、ネビルにも制止された僕は少し無謀な気持ちになり、埃っぽい球の表面を指で包み込んだ。
冷たいだろうと思っていたのに、そうではなかった。
反対に、何時間も太陽の下に置かれていたような感じだった。
まるで中の光が球を暖めていたかのようだった。
劇的なことが起こってほしい。
この長く危険な旅がやはり価値あるものだったと思えるような、ワクワクする何かが起こってほしい。
全く何も起こらなかった。
皆が僕の周りに集まり、僕が埃をはらい落とすのをじっと見つめた。
その時、すぐ背後で気取った声がした。
「よくやった、ポッター。さあ、こっちを向きたまえ。そしてそれを私に渡すのだ」
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夜彩(プロフ) - atheneさん» ご指摘ありがとうございます。私自身もおかしいなとは感じていたので…また何か誤字、脱字等ございましたらお気軽にお知らせ下さい (2022年7月27日 13時) (
レス) id: bd39633a4b (このIDを非表示/違反報告)
athene(プロフ) - クィレル先生は「クウィレル」ではなく「クィレル」です。とても面白いので、いつも楽しみにしています！二人の関係の切なさがなんともいえません！ (2022年6月13日 0時) (レス) @page26 id: e8c4b441c6 (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年3月30日 2時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - お久しぶりです泣 楽しみに待ってました泣 (2021年12月23日 22時) (レス) @page12 id: b1e8907435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜彩 | 作成日時：2021年8月4日 1時
