第65話 ページ15
貴女side
「追い出されちゃった」
「庇って頂いた身で恐縮ですが、些か横柄だったのでは？」
「横柄に、傲慢に振る舞わずして何がラミアーよ」
やっと歩道の小道に戻り十分程歩くと、木立が徐々にまばらになり、星空が切れ切れに見えるようになってきた。
やがて城が見えてきたとき、はっきりと名前を呼ぶ声が聞こえた。
「夜中に供一人を連れて優雅に散歩とは、羨ましい限りですなあ」
───
セブルスside
モンタギューがトイレの旅から帰還したはいいものの、混乱と錯乱が続き、火曜日の朝には彼の両親がひどく怒った顔で校庭の馬車道をずんずん歩いてきた。
寮監として、荒ぶる親をなだめるのに骨を折ったというのに、挙句の果てにAが夜の探検に向かうのを見つけてしまった。
いくらクィレルを連れているからと言って女性が夜遅くに出歩いていい理由にはならん。
加えて、極めて個人的な感情ではあるが、我輩を避けているくせに他の男と過ごすとは甚だ我慢ならん。
怒気と嫉妬が混ざった声が皮肉を紡いだ。
Aがつい、と
ぽつんと一輪咲いた白百合のように儚げで、息が止まる程の美しさだと我輩は場違いにも感じたが、女は鬱陶しげに顔を一瞬歪めた。
その刹那の醜さに驚く。
「セブルス」
ほんの先程、この世の全ての嫌悪を込めたような視線を寄越したくせに、甘い声で名を呼ばれた事に、また驚いた。
「セブルス」
彼女はもう一度、甘えるように我輩の名を呼ぶ。
耳から脳の奥深くへビリビリとした淡い電流が流れていく感覚。
足元の草が彼女の体重を受けて頭を垂れる。
彼女の香りに土の湿った匂いが混じっていることに気がつけるほど接近され、久々の彼女に心臓が高鳴る、体温が上がる。
頬に這わされた手は異様に冷たく、我輩の熱を奪っていく。
そのまま髪を耳にかけるようにスライドした掌が、彼女から目を逸らすことを許さない。
今や彼女の息遣いまでわかる距離にまで顔が近づいたところで、女は我輩の唇に人差し指を当て、蠱惑的に微笑んだ。
「今日ここで会ったことは誰にも言っちゃ駄目。私達の秘密よ？さもないと私…貴方を壊してしまうかも」
自分の言葉に恍惚と酔いしれた女は、ゾクゾクしたように身を震わせた。
そのおかげで青白い顔に、ほんの僅かだが血の気が戻る。
そしてその魔性は、我輩には目もくれず城へと戻って行った。
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夜彩(プロフ) - atheneさん» ご指摘ありがとうございます。私自身もおかしいなとは感じていたので…また何か誤字、脱字等ございましたらお気軽にお知らせ下さい (2022年7月27日 13時) (
レス) id: bd39633a4b (このIDを非表示/違反報告)
athene(プロフ) - クィレル先生は「クウィレル」ではなく「クィレル」です。とても面白いので、いつも楽しみにしています！二人の関係の切なさがなんともいえません！ (2022年6月13日 0時) (レス) @page26 id: e8c4b441c6 (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年3月30日 2時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - お久しぶりです泣 楽しみに待ってました泣 (2021年12月23日 22時) (レス) @page12 id: b1e8907435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜彩 | 作成日時：2021年8月4日 1時
