第51話 ページ1
セブルスside
あれから僅かに時間が経って、未だに二人とも汚れたままなのに、はた、と気がついた。
激情と欲を魔法で清めると、少し頭もクリアになった。
綺麗になった身体に、風邪をひかないように肩まで掛布団をかけてやる。
Aの肩が上下に揺れるのを横目で捉えて思う。
ああ、なんて夜が似合う奴なんだろうと。
あの姿にどうしようもないやるせなさと、優越感と、独占欲を感じる。
昼間は優しく、時として強かに、そして冷徹でいるのに、夜はあんな風に我輩を求めて翻弄してくる。
そのくせ、朝が来たら何事もなかったかのように接してくるのだから、夢中にならないはずがない。
星の輝きの髪も、小さな寝息も、今だけは我が手中にある。
闇の帝王でも、サラザール・スリザリンのものでもない。
近づいたら遠くなって、揺れてはまた募る愛しさよ。
愛しい彼女を連れ去ってしまう朝が憎い。
永遠に朝が来ないのなら、いつまででも側に居てくれるのではと、愚かな妄想までする始末だ。
先程清潔にしたシーツの海に泳ぐAの髪を撫でてやりながら、問う。
我輩は…僕はどうしたらいいんだ？
「リリー」
───
貴女side
身体を包む暖かさに、意識が浮上してきた。
腰が重くはあるものの、身体の不快感は無くなっているのだから、彼が綺麗にしてくれたんだろう。
二人で作り上げた熱量は、既に闇の中へと消え去り、もう手の届かないほど遠い過去のものになってしまった。
そのことを惜しいと思いながらも、髪に触れる穏やかな温もりに全てを預けてしまうほどには、この瞬間もまた愛しい。
朝が来たら、私はまた、冷徹なラミアーに戻らなければならない。
なんて馬鹿な女。
この先に愛などないと知りながら深みにはまっていくのだ。
このまま、朝が来なければ。
髪をすく優しい指に縋っていられたなら。
案外大きな掌で髪を撫でられてしまえば、途端に泣きたくなる程の幸せが胸に溢れて息が詰まってしまう。
自分を取り巻く全てが優しくて、この瞬間が永遠に続いて欲しくて…
「リリー」
夢物語に揺蕩いそうになっていた頭は、急激に現実に戻された。
私は誰の代わりか、なんてわかっていただろうに。
自惚れも甚だしい。
彼が傅くのは何時だって、正義感が強い、豊かな赤毛のあの子だ。
学生の頃だって、瞳に写すのは赤だけで、白銀なんて見向きもしない。
視線に入れても緑のみ。
ああ、こんなことならいっそ…
今すぐ息絶えてしまいたい。
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夜彩(プロフ) - atheneさん» ご指摘ありがとうございます。私自身もおかしいなとは感じていたので…また何か誤字、脱字等ございましたらお気軽にお知らせ下さい (2022年7月27日 13時) (
レス) id: bd39633a4b (このIDを非表示/違反報告)
athene(プロフ) - クィレル先生は「クウィレル」ではなく「クィレル」です。とても面白いので、いつも楽しみにしています！二人の関係の切なさがなんともいえません！ (2022年6月13日 0時) (レス) @page26 id: e8c4b441c6 (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年3月30日 2時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - お久しぶりです泣 楽しみに待ってました泣 (2021年12月23日 22時) (レス) @page12 id: b1e8907435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜彩 | 作成日時：2021年8月4日 1時
