衝撃 ページ30
Side.エーミール
「エミさん!!!」
後ろを振り向くのと同時に、誰かに手首を掴まれる。
橙の瞳に水色の髪の毛。
さっきまで側にいた彼だった。
「チーノ君!?」
「走れ!!」
手首に強い衝撃が走り、自然にエーミールの足が動く。
慌てて体制を整え、前傾姿勢になったままエーミールは叫んだ。
「どうしたんですか!?なんで走って……」
「いいから!!」
まるで振り向かせないとでも言いたげなチーノのスピードに、普段運動しない身体にムチを打って必死に着いていく。
ひんやりとした空間の中、運動で体温が高くなっていくのを感じる。
一体チーノ君は何を見たのだろうか。
そんな疑問を抱えるながらも、無我夢中になって廊下を駆けていく。
ふと、先程のことを思い出す。
紅く見えた先生の瞳。あれが、何かに関係づいている気がしたのだ。
「ショッピ君!!」
突如、前方から居ない筈の彼を呼ぶ声が聞こえ、エーミールは顔を上げた。
視界の先にはフヨフヨと不安げに佇む猿山と、息を切らしながらエーミール達を…いや、その奥を睨むショッピが居た。その手には、栓を抜かれた消化器が握られている。
「下がってて下さい!」
何かを察したのか、チーノがショッピの左側に駆け込む。チーノに腕を握られていたエーミールも、顔面が地面に衝突したもののなんとかスペースに滑り込む事が出来た。
額を抑えながらエーミールは背後を振り向く。
「な、何して……っ!?」
その時、初めて視界に映った。
死神が手に鎌を握っているのを。
彼自体の様子もおかしい。何時ものほんのりとした優しげなオーラは無く、代わりに放っていたのは殺意、敵意、憎悪。
それが自分達に向けられている事なんて、混乱状態のエーミールにもはっきりと分かった。
ショッピがレバー握ると同時に、辺りが白いもやで埋まっていく。
一体何が……何が起こっているのだ。
額の痛みを忘れ、目の前の状況をただただ見つめる。
「エミさん!」
ショッピに呼ばれハッと意識を現実に戻されるエーミール。
そうだ、呆然としている暇ではない。
状況すらよく分かっていないが、この場から離れた方が良いのはなんとなく分かる。
白い霧の中、万華鏡のように見え隠れする彼らの背中を必死になって追いかけた。
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楼(プロフ) - ただの黒砂糖さん» おめでとうございます!! (2020年7月18日 23時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 10000hit………え??うせやろ??? (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 楼さん» ちょっとヒント与えすぎたかなHA☆HA☆HA……コメントありがとうございます(賢者タイム) (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
楼(プロフ) - sn君よ…君が鬼なったこともお兄ちゃんが誰なのかも丸わかりだ (2020年7月18日 20時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 114514さん» 読まれていた…だと……!?あ、コメントありがとうございます。 (2020年7月3日 18時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ただの黒砂糖 | 作成日時:2020年4月19日 13時