信頼 ページ31
Side:エーミール
「…もうええやろ」
ショッピの言葉を皮切りに、エーミールは荒い息をしながらヘロヘロとその場に崩れ落ちる。そして滴り落ちる汗も拭ぬまま、肩で息をするショッピを見上げた。
「何が…ッケホ、何が起こってるんですか…！？っ、先生、は、一体なん、で…」
酸欠のせいでぐわんと揺れる視界にも気を留めず、エーミールは言葉を捲し立てる。
変わり果てたしにがみ。鎌。殺意。憎悪。秀でた頭脳を持ちながら、何もかも理解出来なかった。
「…エミさん、一旦落ち着き」
そんなエーミールに、チーノが肩を置く。ここでやっと、エーミールはショッピが酷く顔を歪めていることに気づく。普段は決して見ることのない表情に、エーミールは「…すみません」と俯いた。
「おーい、みんな〜」
重苦しい雰囲気を壊すかのように気の抜けた声が響き渡る。猿山だ。
「っ…猿山さん」
エーミールは見慣れぬ青い霊体に驚きつつも、別れる前となんら変わっていない彼の姿に安堵する。
「よかった〜、みんな無事で。」
「猿山さんこそ…」
「…にしても、君たちの先生の身に一体何が…」
「…わかりません…ただ、きっとこれだけは言えます」
ショッピがぐっと拳に力を入れる。
「『アレ』は、しにがみ先生やない…」
それはエーミール自身も感じていた。そして、きっとそれはチーノも同じなのだろうなと、廊下の先を睨みつける彼を見て思う。
人間という生物は、つくづく、自分を偽り、隠蔽する。相手の機嫌を取るために、思ってもいないことを口にする。相手を服従させるために、弱い自分を隠す。
しかし、それを好まない人間だって多数いて、おそらくしにがみもそのうちの一人なのだ。いつだって正直な自分のまま相手にぶつかる。それが兎士神仁香という人間だ。それは偽りの姿で『アレ』は彼の本性である。もしもの話だとしても、そんなこと考えられなかった。
いつも相談に乗ってくれた彼を、難関中高一貫校に合格した時、まるで自分のことのように喜んでくれた彼を、卒業先で声を上げて泣いていた彼を、エーミールは信じていた。
「…信頼、されてるんだね」
教師にとってこれ以上の幸せなんて無いんじゃないかな。と、猿山は優しく微笑んだ。
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楼(プロフ) - ただの黒砂糖さん» おめでとうございます!! (2020年7月18日 23時) (
レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 10000hit………え？？うせやろ？？？ (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 楼さん» ちょっとヒント与えすぎたかなHA☆HA☆HA……コメントありがとうございます(賢者タイム) (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
楼(プロフ) - sn君よ…君が鬼なったこともお兄ちゃんが誰なのかも丸わかりだ (2020年7月18日 20時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 114514さん» 読まれていた…だと……！？あ、コメントありがとうございます。 (2020年7月3日 18時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ただの黒砂糖 | 作成日時：2020年4月19日 13時
