ただ貴方に触れたい【煉獄杏寿郎】

愛しい貴方 ページ3

煉獄さん、どうして何も言わないんですか。


私があまりにも呆気なく死んだから見損ないましたか？


確かに私達はただの柱の仲間でしかなかったけれど、私は、貴方のことが好きでした。


でも、私にはその気持ちを伝えることが出来なかったんです。


そんな勇気すらもない、そんな柱だったんです。


でも、と今なら思います。


死んでしまうのなら、例え振られたとしても言えばよかった。


死んでしまったら何も言えない。


貴方には私の声が届かない。


それはどう足掻いても変わらない事実でしかなくて、どうしようもなく、悲しい。


戦死したことが恥ずべきことではなくても、本当は死にたくなかった。


まだまだ、生きていたかった。


自ら鬼殺隊に入ったのに、そんなこと言う私は我儘ですか？


みんなと一緒に笑って、戦って、守られて、守って。


そんな日々が続くと私自身が信じていました。


馬鹿ですね。


鬼殺隊でなくとも、必ず明日があるとは限らない。


私は幼子でさえ分かる事実から目を逸らしていた。


それを後悔しない日は来ないでしょう。


だからこそ、煉獄さん、貴方に想いを伝えられなかった私は、今伝えます。


貴方に聞こえなくとも。


『煉獄さん、貴方が好きです』


その日、煉獄さんは口を開くことも、涙を流すこともなかった。


ただ、私の青白く、二度と瞼が開くことのない面白みのない顔をじっと見つめていた。

後悔→←今までありがとう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す