ただ貴方に触れたい【煉獄杏寿郎】

愛しています ページ16

煉「そうだったのだな。A…」


煉獄さんは手紙を閉じると目を瞑った。


その拍子に彼の頬に涙が伝う。


私の一世一代の告白ですよ。


結局渡せなかったですけどね。


煉獄さんは目を開くと私のお墓を見すえた。


煉「俺も早く言うべきだったのかもしれん。俺も君を好いている」


煉獄さんの表情は悲しそうで、切なそうで。


私も煉獄さんと同じように涙を流し、息を詰まらせる。


本当ですか。


貴方も私を好いてくれていたんですか。


煉「君が死んだと聞いた時頭が真っ白になった。君は優秀で、努力家だった。そんな君が死ぬなんて俺は微塵も考えていなかった」


そんなことないですよ。


私は優秀でもないですし、努力家でもないです。


ただ、少しでも貴方に近付きたくて必死だったんです。


煉「しかし、俺のそんな浅はかな考えは簡単に崩れ去ってしまった。君が大事ならば、気持ちを伝えるべきだったのだろう」


そうですね。


私も貴方が大事ならば、気持ちを伝えるべきでした。


煉「遅くなってしまい、すまない。俺は、A、君を愛してる」


誰か、私の涙を止めてください。


溢れて溢れて仕方がないこの涙を。


『私もです…っ。私も貴方のことを愛していますっ』


日は既に殆ど沈んでしまっている。


私の体も心做しか透けているように感じる。


私がどんなに愛の言葉を紡いでも、貴方と私の視線が絡み合うことはなくて。


どんなに涙を流しても、貴方に私の姿は見えなくて。


どんなに手を伸ばしても貴方に触れられなくて。


もう、消えてしまう。


『私はずっと貴方のことを愛しています』


私のお墓を見つめる、貴方を私は見つめる。


日が沈む。


嗚呼、ただ貴方に触れたい。


私の魂は完全にこの世から消え去った。

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