ただ貴方に触れたい【煉獄杏寿郎】

残り三日 ページ11

顔、怖いですよ。


いつも以上に怖いですよ。


今日は藤の家紋の家にお泊まりですか？


不死川さんの厳しすぎる稽古が懐かしいです。


本当にあの時は死ぬんじゃないかと思いましたよ。


あれ？何処に行くんですか？


湯浴みですか？


それなら私はここで待ってますね。


不「何で、てめェがここにいるんだ」


廊下から不死川さんの声がして私は部屋を出た。


あら、顔がそっくりな男の子が。


弟さんですか？


玄「あ、兄貴っ！」


不「うるせェ。俺に弟なんていねェ」


不死川さん、どうして、そんなことを言うんですか。


弟さんを守りたいからですか。


でも、私は知ってます。


そんなことしてもお互いに傷つくだけだって。


本当は弟さんが大好きなんでしょう？


死んでしまってはもう、何も言えないんですよ。


死んでしまったからこそ、私は貴方にそれを伝えることが出来ない。


声が届かなくては、何も伝えられないんですよ。


触れることも出来ないんですよ。


私には、貴方達兄弟の問題に割って入る権利はないですけど、駄目ですよ。


今を大切にしないと、後悔しますよ？


守りたいから突き放すんじゃなくて、


守りたいから大事にしないと。


そうしないと貴方達がいつまでも報われないですよ。


何でそれを伝えられないんでしょうか。


貴方には幸せになって欲しいのに。


死んでからじゃ遅いのに。


どうして、分からなかったんだろう。


不死川さんは結局、湯浴みに行ってしまった。


嗚呼、弟さん。


悲しいよね、大好きなお兄さんだもんね。


諦めないで。


いつかきっと昔のように笑えるよ。


不死川さん、ほら、弟さんがこんなに悲しそうな顔をしてますよ。


貴方がしたいことはそんなことじゃないでしょう？


貴方が私のように後悔しませんように。


私は藤の家紋の家で一夜を明かした。

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