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一通り話したかと思えば、無言の時間が少し続いた
気が付けば、空がオレンジ色に染まる時間になった
もうこんな時間か…
そろそろ家に帰ろうかな…
「あの、!」
いきなりまた彼に声掛けられたもんだから、少しびっくりしてしまった
「今日は…ありがとうございました。見ず知らずの奴に親切に話してくれて…君はすごく優しいね」
彼が表情を崩して微笑む。その笑顔に少し胸がキュッとなる
『…こちらこそ私なんかと話してくれてありがとうございます』
ペコッと軽くお辞儀をして顔を上げると、彼は優しい眼差しだった
「じゃあ…この辺でお開きとしますか」
少し薄暗くなった風景に、私と彼の影が並ぶ
入口まで来ると、彼は私と反対方向に歩き
「今日は色々とありがとう。また機会があれば…じゃあ」
彼は優しく微笑むと、背中を向けて歩き出した
『あっ、あの!』
私は彼を呼び止めていた。何で呼び止めたのかはわからない
彼を呼び止めないと、もう二度と会えないような気がして
本能的だったんだと思う
彼は、すごく驚いたような表情をしている
『明日も…来ますか?』
私の問い掛けに、ニコッと笑って
「もちろん!ここの公園また行こうかなって考えてたから」
じゃあね!と、少し高めの声色が耳に届いた。
彼の姿が見えなくなるまで、目が離せなかった
彼が帰った後も___公園には金木犀の濃い香りが充満していた
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作者名:ミユモン | 作成日時:2021年10月24日 21時