20話 隣の選択肢 ページ20
残るは緑間、紫原、赤司、そして愛莉の四人に絞られた。何故この面子なんだろう。特別話しやすい人が誰もいないじゃないか。
緑間は彼等の中でも真面目な方だが、あまり口数が多い訳ではないので必要な時以外滅多に話したことがない。紫原は、そもそも性格から合わない気がしていた。
この四人の誰かだったら、まだ愛莉が一番マシなのでは……?考えれば考える程そう思えてくる自分がいた。
……赤司?いや、絶対無理だ。
嫌だとかじゃない。普通に心臓が持ちそうにないだけ。あと、私が隣に座るとか向こうが可哀想だから。こんなところで運なんか使わなくていい。
「……そう言えば、奇数でやったから一人余るんじゃないのか?」
青峰が桃井に質問するのが聞こえた。まさにその通りだった。
「うん。だから一つだけ三人の席を作ったの。一番後ろに座れなくても、補助席使えばいけるでしょ?」
桃井が名案と言わんばかりに胸を張った。確かに、くじ引きの末一人だけ余るという悲しい結末はなくなった。
……と言うことはつまり、この時点で赤司と愛莉が隣になる確率は『0』になったことになる。
正直、それだけは絶対に避けたかった。運なので私がどうこう出来る問題ではないけど、仮に二人がお互いのことを好きでなくても見たくなかったのだ。こればかりは幸運だったと思う。
勝手に心の中で感極まっていると、桃井の驚いたような声が耳に飛び込んできた。
「え、愛莉ちゃん3番なの?」
「……は」
今何と。
愛莉が3番、つまり桃井の隣になる。何故こうなった。唯一の望みが消えた今、残されたのは三人の誰かと隣になる運命しかない。私だけ凄くはみ出し者になった気分だ。
仕方がないので、残る彼等に順番に聞くことにした。
「……緑間、何番?」
もうこの際緑間でいいよ。淡い期待を胸に尋ねるも、その一言は予想を裏切る。
「俺は2番だが」
「……紫原は?」
ここで諦めてはいけない。隣にいた紫原に続けて問う。彼の答えは至ってシンプルだった。
「えーオレ?4番だけど」
……マジかよ。
「じゃあ、残るは……」
恐る恐る振り返る。最早嬉しさを通り越して緊張で手が汗ばんでいた。
「……『1番』」
先端に『1』と書かれた割り箸が視界に飛び込んできた。見間違うはずもない、縦棒一本。
私も無言で自分の割り箸を見せる。
「1……だな」
赤司の声がやけに頭に響いた。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時