歌い手さんたちの恋愛事情

▽ なるせの訪問 ページ33

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ


防音室に籠り無心で作業をしてると
遠くの方でインターホンの音が聞こえた

時刻は22時
こんな時間に来る非常識な人間は…

インターホンの画面に映っていたのは
想像していた通りの人物だった


「なるせ…」


私は昔から感情が顔に出やすいから
なるせと会うのをやめて
連絡もあまり取らなくしてたんだけど
痺れを切らしたのかとうとう凸られてしまった

出るべきか居留守決め込むか悩んでたら画面が消えて
ほっとしたのも束の間
次は防音室に置いたままのスマホが鳴った


「こわいよおおお」


このまま無視してるのも心苦しいし後が怖い
仕方なく電話に出てみる


「…もしも、」

な「居るのは分かっている」

「へ」

な「開けなさい」

「…」


ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ


「ひっ」

な「5、4、3、2…」

「分かった！分かったから！」


急いでオートロックを解錠すると電話を切られた

こっっっわ…
ストーカーよりこわい

とりあえずまたTシャツ一枚だったから
適当にズボンを履いてたら玄関のピンポンが鳴った


「…なんでしょう」

な「おいチェーン外せや」

「なんで来たの」

な「いいから入れて」

「…」

な「A」


渋々チェーンを外してドアを開けると
勢い良く入ってきたなるせに抱き締められる


「うぐっ、」

な「まっっっじで辛かったもうむり」

「な、なるせ」

な「ちょーーーーー会いたかった！やっと会えた！」


苦しいぐらい力いっぱい抱き締められたのと
きゅんきゅんしたので胸が苦しくなった

会えなくて辛かったのは私も同じで

あったかいなるせに抱き締められて
なるせの匂いに癒されて
落ち着いたのと同時に涙が出てきた

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