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先程まで潔くんが座っていたところに、腰を掛ける千切くん。
潔くんと同じ距離なのに、全然違う。
心臓の鼓動の速さも、私の頭の中も何もかもが潔くんの時と違うことに困ってしまう。
自然に話してみたいのに、自然に振る舞って千切くんと仲良くなりたいと思っているのに
それが、できない。
「んで?見に来てくれんの?」
千切くんとまともに会話なんて1回でもしたことがあるのだろうか。
いや、初回は勝手に暴走して一方的に話して
言葉にならない言葉で会話している思い出しかない。
そんな経験しかしてない私はまたもや言葉が喉に詰まって声が上手く出せなくて
何回も首を縦に振った。
絶対見に行きたいという気持ちを沢山乗せながら。
「よし、いい子」
これだけでも私の精一杯なのだ。
こんな会話にもならない会話ですら、私の頭の中は真っ白で何も考えられないというのに
千切くんという私の好きな男の子はいとも簡単に私に触れてくる。
猫を撫でるような、そんな撫で方を私にしてくる。
私は猫じゃないよ。と伝えられたらどんなに良いだろうか。
話すだけで言葉に詰まって苦しいと感じる私の心はいつになったら千切くんと話していいよと合図をくれるのだろうか。
話せない私が珍しいと思って構ってくれるこの状況はいつまで続いてくれるのだろうか。
いつか来てしまうであろう千切くんの興味が薄れてしまうのが
____嫌だ。
見ているだけで満足していたくせに、私は貪欲になってしまったものだ。
見ているだけも、見ているだけに戻ってしまうのも
嫌なんだから。
「猫みたいだな、A」
そう言いながらもっと頭を撫でる千切くんの手が心地の良い物にどんどん変わって私は目を細めながら閉じてしまう。
「A猫ちゃん、仮にも男の前で目ぇ瞑んな。____キスされんぞ?」
瞑るなと言われて、目を慌てて開けるとキスされるぞと言う千切くんの顔は
あと1センチ、あと1センチ近づいてしまえばキスされてしまうほどに近くて
息を飲んでしまった。
思考停止状態所では無い。
そんな次元では無い。
自分の目が急に視力を上げて千切くんの綺麗な目をじっと見てしまう。
「俺だって、男なんですけど?」
あぁ、好きだ。
こんなにも私をぐちゃぐちゃに掻き乱してくるこの人のことが私は堪らなく。
「あ、A?……やべぇ、また動かなくなった國神呼ぶか」
そう言いながら千切くんが医務室から退室した瞬間に力が抜けてしまった私はベッドに再び寝転ぶ。
心臓が飛び出しそうなくらいうるさい鼓動を落ち着かせる為に。
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ゆい - こんな素敵な小説初めて読みました。続きが超超超楽しみです!何だかもう生きる励みになります…🥲これからも応援してます!! (2月4日 7時) (レス) id: 2a419589a1 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - あぽろさん» わぁー!!!ありがとうございます!!めっちゃ嬉しいです!これからもゆっくり更新することになりますがよろしくお願いいたします!!!! (1月5日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ - この小説大好きです!!キュンキュンしまくりでスクロールする手が止まりません!これからも頑張ってください!!💗 (1月4日 0時) (レス) @page13 id: 60a5994a82 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - ちささん» ちささん!ありがとうございます!前作から……!嬉しいの極みです!!!!不定期更新で申し訳ありませんが千切の魅力、頑張って出せるように頑張ります!これからもよろしくお願いします! (12月13日 14時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 「青春とは、恋愛である。」からきました!前作もすごく好きなのですが、なにせ千切くん推しなもので、すごく楽しみです…!現時点でもう大好きです!!更新楽しみに待ってます! (12月12日 3時) (レス) id: 3ee6d9cd32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年12月11日 23時