heartache 2

番外編 妃菜子の恋 5 ページ38

そういえば、Aもこうして西川くんと電話をしてだんだん仲良くなっていったんだっけ。

私も頑張ればこの恋実るかなぁ？

いやいや、だめだ、だからあの子の場合は西川くんのほうが一目惚れだったんだった。

もうやめよう、高望みするのは。

そう思うのに、中島さんは私によく電話をかけてくれたし、我慢できずに私からもたまに電話をかけてしまうし。

そして、電話をよくするようになり数ヶ月。

「あ、私今度AとCS見に行きますね。」
『まじか、緊張するわー。』

ある時こんな電話をした。

私は体育座りをして、自分の足の爪を気にしながら中島さんの声を聴いていた。

「えー、でも毎日いろんな人に見られてるじゃないですかー。」

ドームには数え切れないほどの観客がいるでしょう。

私はその中のひとりにすぎない…あ、爪がかけてる…。

そんなことを考えていると

『妃菜子ちゃんに見られるのが緊張すんの。』

って。

「えっ」
『やっぱいいとこ見せてぇだろ。』

かけてる爪なんかどうでもよくなる。

だって、その言葉をどう捉えればいいの？

「妃菜子ちゃんに」だなんて“私限定”のように言われる特別感とか、

「いいとこ見せたい」っていう男らしいプライドとか。

もしかしたら、少しは私を意識してくれてる？

…いや、考えすぎたらダメだと何度自制すれば気がすむの私は。

「いいところ、見せてください。」

かわいげのない私は感情を隠すためにこんな言葉しか選べなかったけど、中島さんは笑ながら、

『おい、プレッシャーかけんなよ。』

と返した。

「…楽しみにしてますね。」

私も笑ってそう言った。

だけど心の中では、結局はただのファンという状態で満足できてない自分自身を殺すのに必死だった。

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