heartache 2

番外編 妃菜子の恋 3 ページ36

『もしもし、中島卓也です。』

耳にあてた携帯から、そんな丁寧な言葉が聞こえてきた。

「あ、あの私、千葉妃菜子です…」
『妃菜子ちゃんね。』
「は、はい。」

妃菜子ちゃん、なんて、下の名前を呼ばれるだけでどきどきした自分。

隣でそんな私をAがにこにこしながら見ている。

『あの日、居酒屋であった子だよね？』
「そうです！覚えてるんですか？」
『覚えてるよ(笑)。』
「やだ、恥ずかしい…、私たち結構酔っ払ってたのに…。」

あの日のことを思い出す。

酔っ払ってかなり汚い言葉遣いになってたようなそんな気がする。

『いや、可愛かった可愛かった。』

くすくす笑いながらお世辞を言ってくれた。

「私、中島さんのファンなんです。でもあの時中島さんに声かけられなくてちょっと後悔してました。」

私は笑いながら言ったけど結構本気で後悔したのは事実。

『別に、これからいくらでも声かけてくれればいいよ。つーか、俺もせっかくだから妃菜子ちゃんともっと話したいけど。』
「えっ？」
『電話番号教えてくれる？俺今メモるから。』

驚きと喜びとが一緒になって一瞬パニクる。

「あ、あの、090…」

焦りながら私は自分の番号を伝えた。

『はい。じゃあ今度はちゃんと俺の携帯から電話するから。』
「あの、ありがとうございます…！」
『じゃ、また今度。』
「はい！」

私はAに携帯を返した。

なんて、スマートな番号の聞き方だっただろう。

心臓がバクバクいってるよ。

Aが西川くんとの電話をおくと、ニヤニヤと私の顔を見る。

「電話、かかってくるの楽しみだね！！」
「やばい、超緊張したんだけど！でもAまじでありがとう！電話なのにめっちゃかっこよかった！！」

そして密かに、私は中島さんに対し恋心をもってしまった。

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