heartache 2

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試合がなかなか動かないまま迎えた5回の裏。

2アウトで打席に立ったのは今日7番ライトの谷口くん。

谷口くんのファンもたくさんいるので緑色のタオルやらフラッグやらが目に入る。

すると谷口くんが逆方向レフトへの強いあたりでヒットとなり出塁した。

会場が湧き、みんなが次に繋がれ！と思いを込めて応援する。

そして8番の大野さんがフォアボールでまたも出塁。

繋がってる。

2アウト1、2塁。

そして次は中島さん。

「あ、やべ、中島さんだ！やべ。」

妃菜子が隣でそわそわする。

何がやばいのかはわからないがひたすら“やばい”とぶつぶつ呟いてる。

またこの打席もフルカウントまで粘りに粘って10球。

「はぁ〜、かっこいい〜。私もあの粘りに絡まれたいわ〜。」
「は？」

意味わからん。

頭がおかしくなった妃菜子をほうっておいてあたしは中島さんの打席に目を凝らした。

11球目、粘った末にフォアボールで満塁に！

あたしはどきどきとする胸を抑える。

だって2アウト満塁で迎える次の打者は、

遥輝くん。

あたしは自分の指を重ね合わせて、ぎゅっと力を入れた。

「…打って。」

遥輝くんならここで打つでしょ？

瞬きを忘れてしまうくらいにあたしは遥輝くんの姿を見つめていた。

またもフルカウント。

そして、次の球であたしは息をするのも忘れた。

遥輝くんがバットを振ると、ライト線へ強く球がとんでいった。

会場が今日イチで湧いた。

それが、タイムリーツーベース。

遥輝くんが先制打を放った。

笑顔をこぼす遥輝くんがモニターに映った。

その笑顔で少し安心する。

楽しそう…。

楽しそうにプレーする遥輝くんが、めちゃめちゃかっこいい。

「ふふっ」

あたしはニヤニヤしながら笑い声を漏らした。

「なに、彼氏がタイムリー打ったのにそのうすい笑いは。」

妃菜子があたしを不気味そうに見る。

「いや…、かっこよすぎて声も出なかったけど…、昨日の夜めちゃめちゃ弱気だった遥輝くん思い出したら申し訳ないけどちょっと笑えちゃったの。」
「うーわ、のろけかよ。」
「だって、昨日あんなに緊張してたのに結局いいところもってくんだから、かっこよすぎて笑えちゃうでしょ。」

ほんと、何ヶ月付き合ってもかっこいいと思う気持ちは変わらないなぁ。

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