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◇◆◇
『えっ、師範、任務じゃ…?』
「雑魚だったし。先刻終えたところだけど」
恥ずかしい。
師範はあの出来事を覚えてるんだろうか。
私のファーストキスをもらってくれたこと。
『ちょっ!』
「…君には、僕がこんな風に見えるんだ」
いつの間にか描いていた絵は奪われて、
私の膝の上にはシャーペンだけが残った。
軽く下書きしただけの絵だから線も雑だし、
そんなものを見られた反応の仕方に迷う。
じっとスケッチブックを眺める師範。
仕方なく返してもらうのを待つ私。
病室に何とも言えない静けさが広がった。
『…こんな風って、どんな』
「僕はこんなに笑った覚えがない」
当たり前のことだ、私からしたら。
だって記憶が戻ってないんだから。
だけど、それが分かるのは私だけ。
本人からしたらそれは不安でしかないんだ。
師範に限らず、この世界の皆に言えること。
結末を知らないことは
楽でもあり、同時に苦痛でもある。
『…だって私の妄想ですから』
「変なの」
眉間にシワを寄せる目の前の師範は、
私が描いた本当の師範とは似ても似つかない。
でも、この師範が今の本物の彼なわけで。
「想像にしては良く描けてるよね」
『何度も妄想してましたからね』
「気色悪っ」
『自覚してますから抉るのやめて』
師範の手からスケブを奪い返して
またシャーペンを走らせていく。
いつの間にか師範はベッド横に椅子を出し、
私の腕に収まった絵を見つめていた。
「君に上官命令があるんだけど」
『なんですか〜』
「……君にもっと近づきたい」
ベッドに頬杖ついて顔隠してるけど、
真っ赤な耳がしっかり見えてるよ。
飄々としながらデレるの可愛いな。
スケブとペンを脇に置いて、
師範にギュッと抱きついてみた。
「なっっ!?」
『ぎゅーーーっ!!
ほらほら、して下さいよ師範も』
「…当たってるけどいいの?
抱き締め返したら顔を押しつけちゃうけど」
枕投げて部屋から追い出したよね。
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さつむいこん(プロフ) - ハイキュー!!さん» 今日1日で向こう1ヶ月分の喜びを感じた気がします、コメありがとうございます! むいちろくん可愛いっすよね…っ!スーパーエンジェルになってもらえるよう精進します、更新のんびですが見守ってやって下さいな…!! (2021年6月15日 22時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー!! - もう、更新楽しみすぎます!無一郎天使!遊郭に炭治郎いないの痛いですねぇ〜勉強頑張ってくださいね! (2021年6月15日 20時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - 澪凪さん» 澪凪さんっ! コメント本当活力になります、ありがとうです〜! またイチャつかせますので発狂しちゃって下さいね(( (2021年4月19日 23時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 〜〜〜〜〜っ!!ヤバいです可愛すぎて発狂しそう…!! (2021年4月18日 23時) (レス) id: a0ad16ec48 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - 星猫さん» 鬼滅&響け!ユーフォニアム&ちびまる子ちゃん……くらいしかまともに見たことないですね。呪術も気になってるんですが乗り遅れてしまってて(;^ω^) (2021年3月29日 22時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年3月22日 21時