今宵は月が赤いですね。霞ノ章

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「へぇ丁なんだ。意外」


『意外とはどういった意味合いで？』


「多分その意味で合ってると思うよ」


『失礼ですよ貴方！』


「だってもう存在が馬鹿っていうか…」









「…存在が馬鹿」









もう、なんなの。

違うむいくんでも言う事は見事に同じじゃん。それとも何だろう。
彼の中には、少しは私がいるのかな？


そうだったらどんなに良いか。
でも、もう夢は見ないって決めたから。

自分の気持ちや勘じゃ無くて、
私が見たり聞いたりした事だけを信じていたい。



いつか笑いかけてほしい。

「また会ったね」って言ってほしい。

「昨日楽しかったね」って笑い合いたい。




『馬鹿でもちゃんと戦えてますんで』


「馬鹿だから戦えてるのかもね」


『だから失礼ですよ！』




歩き始めてから１度も目は合わないし、
相変わらず歩くの速すぎるし。
憎まれ口しか言われてないけど。




『霞柱様、私霞柱様がやっぱり大好きです！』


「何なのいきなり」


『霞柱様は私のことどう思ってますか？』



「………小鹿、みたい」




まさかの比喩繋がりっすか。
たしか水柱は置物だったねぇ。
あれ見て私天才って天才なんだと思った。

なんか、全ジャンルにおいて天才。




『小鹿…、【子】ってあたり可愛いってことでいいですか？』


「いや、足取りおぼつかない所が特に」




ほうほう、しゃんとして歩けってことね。
もう少し翻訳すれば、前見て歩けと。

成程承知した。
ならばモデルのようになるまで！！

背筋をしゃんと伸ばし、
顎を少し引き上げてむいくんを見た。




「今度は何」


『どうですか！？』


「…小鹿を脱して子供になったね」


『それは生物学的には進化ですね』


「生存する上での勘は鈍くなったと思うけどね」




もうどうしようもないじゃんか。なんなの、むいくんは大人っぽい子が好みなの？
しのぶさんとかしのぶさんとかみたいなさ。なんかこう…、大人〜って感じの？？


あ、じゃあ年上女性が好みなのかな。
本来のむいくんって甘えん坊だもんね。
有一郎みたいな女の人が理想ってわけ？

程遠いな、私と一番真逆の人間じゃん。




「別に年上女性に興味はないけど」


『じゃあ年下ですか？』


「…誰にも興味はない」


『私にも？』



「いいから、早く行くよ」


『ちょっ、待ってくださいよ！』




歩き始めた彼に必死で駆け寄る。
先刻の質問、答えてほしかったなぁ。

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