【佰漆拾参】刃の折れた亡霊剣士。 ページ7
side無し
煉獄杏華は、もう限界だった。
彼女の心は、笑って誤魔化しきれない程に壊れ始めていたのだ。
何も見えない、漆黒の世界でただ自分だけが死に近付いていく。
何も見えない、顔も見えない。
ただ、彼らの声だけが頭の中でノイズのように反響していた。
唐突に視力を奪われた苦しみは、計り知れない物であった。
幸せの箱に、ポロポロと小さな穴が空いていく。
抱え切れない程の愛は、今の彼女には重すぎて。
吐きそうな程、甘ったるくて優しくて。
ゴリゴリと、ヤスリで心を削られていくような感覚だった。
聴力が研ぎ澄まされて行く。
拾いたくない、聞きたくない言葉さえ鮮明に拾ってしまう。
耳を塞いでも、四方八方から悪口が降り掛かる。
嗚呼、それがどれほどの地獄なのか。
『あああああ』
『うわあああ』
煉｢姉上……！｣
ギュ、と後ろから杏華を抱き締めた。
ビク、と僅かに震える身体が酷く痛ましくて。
幼い頃はあんなに大きく感じた姉の身体が、今やとても小さく感じて。
まるで……幼子のように。
煉獄杏華は、決してメンタルは弱くない。
ただ、心に出来た傷を……誰にも悟らせず、水面下で隠してしまうだけ。
それが、どれほどの苦痛を産んでいるのか。
今の杏寿郎には、想像すら出来ない。
けれど……今はただ、この優しい姉の為に精一杯やる事をやりたいと願ったのだ。
【閑話休題】
陰口を叩いていた隊士達は珍しく真顔(ﾋﾟｷﾋﾟｷ)のカナエに預け、二人は病室に戻った。
杏華は泣き止んでいたが少し声が掠れている。
煉｢姉上、今はもう寝ましょう。
大丈夫、俺が傍についていますから｣
『君ぃ……私はもう大人だぞ？』
煉｢最近寝れていないでしょう？｣
ギク、と身体が固まった。
『…………よく分かるね』
煉｢弟ですから。
目の下に隈があって顔色も悪いなら、何が原因か大体分かりますよ｣
不機嫌そうな杏華を布団に寝かせ、ポン、ポンと一定のリズムであやしていく。
かつての古い記憶で……己が、姉にして貰ったように。
────眠れないのかい、杏寿郎？
────嗚呼可哀想に、私の布団に来なさいな
────お姉ちゃんがついてるよ
煉｢俺が、ついていますよ。
……杏華｣
言うが早いか。
いつの間にか、杏華は眠っていた。
火傷に覆われた顔で、ただ安心したように。
どうやら杏寿郎の渾身の気遣いは不発に終わったようだ。
サラ、と金紅の前髪を優しく撫でた。
煉｢ゆっくり眠って下さい、愛しい姉上｣
────ゆっくりお眠り、愛しい弟
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花陰 桜(プロフ) - 紗那さん» 初めまして、コメントありがとうございます！私もそこは気合いを入れて書いたので嬉しいです！割と短めですが、モノローグとして現代編も入れる予定なのでお楽しみに！(ふんすっ) (2022年1月31日 19時) (
レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして、とても素敵なstoryでお気に入りです！！一人ひとりの別れでは泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥｀) このまま現代編に続いて欲しいです(^^) (2022年1月31日 0時) (レス) @page50 id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - いちごマカロンさん» 嬉しいコメントありがとうございますm(*_ _)m (2022年1月23日 22時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
いちごマカロン - 面白すぎて一気読みしました！！やばい、小説読んでマジで泣いたのこの作品が初めて、、、新しいエピソードが毎回流される。 (2022年1月23日 8時) (レス) id: 8d57d47a4b (このIDを非表示/違反報告)
花陰 桜(プロフ) - まっひーさん» ﾜｰｲ(*´ω｀*) (2021年12月2日 18時) (レス) id: f28080f41d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花陰 桜 x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 18時
