【鬼滅の刃】ねぇ、守れたよ【肆】

【佰拾玖】乾いた幸福。 ページ31

夢主side

入院中の私が危うく殺されかけたということで、静寂と平穏に満ちていた蝶屋敷が一気に騒がしくなった。
てっきり桃音も入院中かと思ったが、しのぶ曰く｢最近は任務すらサボっていたらしいです｣……との事。

カナエに聞いても、ふるふると困ったように首を振るだけだった。

まぁ、とりあえず無事ってことで…。

ドタバタと忙しなく動く蝶屋敷の女の子達と隠達を横目に、私は窓際でぼんやりと外を眺めている獪岳に視線を移した。

獪｢……なんです？｣

視線に気付いたようで、獪岳がこちらを向いた。
その眼差しや表情には、原作の苛烈さや横暴さは微塵も感じられない。

私がやったというか、獪岳が一人で落ち着いたというか…。

とりあえず数奇な展開だった、とはここに記しておこう。

『？んーん、相変わらず美少年だなって』

獪｢はい？｣

大分困惑した獪岳の視線を受けながら、私はとりあえず落ち着く為にもと彼との馴れ初め……ていうか出会いを思い返すのだった。





【閑話休題】

夢主side

獪岳と出会ったのは、引退した後……では無く、引退する前のある日の事だった。

引退する前は言わずもがな普通に柱として活動していた為、不定期ではあるが柱稽古のように隊士達に稽古をつけていた時期があった。
丁度その時だった、獪岳と出会ったのは。

柱稽古では無い為、普通に木刀を使う模擬戦をやっていた。

ド、と隊士の一人を地面に転がした時だった。

『腕の動きが遅い、それでは鬼の餌だぞ。
次！！』

砂埃塗れになった隊士に喝を入れ、最後尾に下がらせたそのすぐ後、次に現れた隊士は───。

獪｢…手合わせ、よろしく頼みます｣

『…んぉ、』

ある意味で見覚えのあるその顔に、パチパチと瞳を瞬かせた。
まだ鬼化していない、人間の獪岳その人だった。

割と身も蓋もない話にはなるが……この時、獪岳の救済…というか鬼化阻止は半ば諦めていた。
原作で上弦の陸になったのを見る限り、少なくとも時期は遊郭編の後。

この時はまだ無限列車編に入っていなかったし、まさか自分が生存するとは夢にも思っていなかったのだ。

確かに獪岳の鬼化を阻止するという事は、無限城での戦力削減に大きく繋がる。
善逸が単騎で撃退出来る程鬼化してから日が経ってないとはいえ、イレギュラーの可能性も捨てきれない。

あまり阻止は考えてなかった…悪く言うなら見捨てた、か。

だから、まぁ……意外な原作キャラとの接触に、私は大いに困惑したのだった。

青にも似た目が、私を見据える。


『…いいね、良い目をしている。
そういう子は好きだよ、掛かってきな』

【佰弐拾】幸せの箱を埋める焔。→←【勾玉の意味合い】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す