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「京治おはよ〜……」
「おは……って、A、寝癖」
次の日の朝、俺と同じタイミングで家を出た彼女───といってもいつも朝練のない日の俺の出る時間に合わせて出てくるのだが、そんな彼女と並んで学校へ向かう。
俺が指摘した寝癖を恥ずかしそうに片手で抑えながら眠そうに欠伸をする彼女にどうしようもなく愛おしい気持ちが溢れた。
「ふわあぁ、ねむい……」
「夜更かしでもしてたの?」
「撮り溜めてたドラマ観てたら気づいたら夜中だった」
その話題に、ドラマの内容を思い出したのか、先程までの眠気はどこにいったのやら急に目を輝かせた彼女。
「そうだ!ねねね、きいてきいて!」と語り出す彼女に呆れながら「はいはい」と返すが、そのやりとりも俺にとって小さな幸せの一つであり、吐息混じりの笑みを零した。
「そのドラマのヒロインがね!もともと三角関係なんだけど───」
彼女が言うには『二人の男に取り合われて心が揺られ、どちらも振ってしまったヒロインが最終的に他の男に慰められ恋に落ちて付き合う』というどんでん返しな内容だそう。
「めっちゃ泣いたしきゅんきゅんした」
「そういうもんなの?」
「そうだよドラマは女の子の夢だよ」
「Aもそういう恋がしたいの?」
「へ、」
目をまんまるにさせてぽかんと口を開ける彼女に「口、空いてるよ」と頬をつんつん突く。
何度も瞬きする彼女が可笑しくてつい笑ってしまった俺に、彼女も少しずつ目尻を下げてふふ、と微笑んだ。
「京治もそういうこと言うんだね」
「言っちゃダメなの?」
「いや、意外で」
そういう恋ねえ……と、考え出す彼女を見つめる。彼女と恋話なんてしたことがない。
ただ、あの寝言のこともあってかなり気になっていたのだ。
昨日は結局“ユーヤくん”についてわからないまま彼女は帰っていった。ここまで何も言わなかったのは珍しいことである。
まあ幼馴染とはいえ、言えないことの一つや二つくらいあってもおかしくない、彼女にも言いたくないことはあるだろうから深くは問い詰めなかった。
「……わたしは、普通の恋がしたい、かな?」
そう言った彼女は少し寂しそうであった。
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あぁ(プロフ) - みないさん» ありがとうございます( ; _ ; )恐縮すぎて言葉が出ません(>_<)赤葦くんらしさを出しながら最後まで話を組み立てられたらな、と思っています。最後までお付き合いいただけると光栄です (2018年7月28日 21時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
みない(プロフ) - 久しぶりに占ツクを開いたら大好きなあぁさんの作品が出てて凄く嬉しいです。あぁさんの赤葦凄く好きです。続きとても楽しみにしています。更新頑張ってください!! (2018年7月28日 18時) (レス) id: 4024dcb8cc (このIDを非表示/違反報告)
あぁ(プロフ) - しおさん» ありがとうございます(>_<)作品に合った雰囲気で書ければな、と思っていますのでそう言っていただけて嬉しいです、どうか最後までよろしくお願い致します (2018年7月18日 23時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
しお - コメント失礼します。あぁさんのお話、どれも雰囲気溢れていてとても好きです。更新応援してます。そしてご自愛くださいね (2018年7月18日 21時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
あぁ(プロフ) - チャリアカーさん» ありがとうございます( ; _ ; )不定期更新となりますが最後までお付き合い頂けると嬉しいです、 (2018年7月17日 14時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
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