【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ15)

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ーーー牧田さんだ。

そう声がした方へ振り向くとそこには"百発百中"とプリントされたTシャツを着た出水が立っていてその隣には「よ！」と手を上げる米屋もいた。こちらも軽く手を上げて米屋に挨拶を返すとなんとも言えない趣味のTシャツを着ている出水を見た。

「え、なに」
「……別に」
「いや全然別にって顔してないんだけど」

訝しそうにこちらを見てくる出水から視線を外し、秦野の方に向き直る。米屋が「なに食べてんの」と声をかけてきたため直ぐに意識も出水から逸れた。すると、向かいに座っている秦野が「あれ」と声をあげた。

「出水くん寝癖ついてる」
「え、まじ？」
「後のとこ。あ、まさか寝起き？」

「そー。さっき起きた」
「だからちょっと眠そうなんだ」

出水は秦野が指さした後頭部のところを撫で付けながら「もうついてない？」と秦野に確認する。秦野も秦野で「出水くんいろんなとこ跳ねてるから分かんない」と笑いながら答えた。「全部が寝癖みたいに言うな！」という出水に秦野はおかしそうに笑う。

「さっきなんの話してたんだよ」

と、いつの間にか私の隣の椅子に腰を下ろしている米屋がにやにやしながら聞いてくる。出水は出水で米屋の向かい側、秦野の隣の椅子に腰を下ろした。

「私がまた振られたってはなし」
「ははっ、まじかよ。何回目？」
「8かいめー！」

手の指で"8"という数字を表す秦野。その言い方はまるで酔っているような言い方だ。米屋は「8連敗かよ！」と声を上げ、秦野も弄られることには抵抗がないため「そうなんだよ！」と2人で盛り上がっている。そんな2人を横目に斜め前に座っている出水を見た。

どこか遠い目をして頬杖をついている出水の視線は米屋と盛り上がっている秦野に向けられていた。けれどその視線は秦野に向けられているようで、まるで秦野ではなく別の誰かを見ているようだった。そんな出水を今度は私が訝しむ様に見る番だったが不意に出水はこんなことを言い放った。

「秦野さんかわいいのに」

「え、」

まずそう声を上げたのは私だった。けれど固まっていた秦野も私に釣られる様にそれはそれは素っ頓狂な声を上げた。米屋も声は上げなかったもののまるで珍しいものを見たと言わんばかりに目をぱちくりさせている。

「え、え、今！私のこと可愛いって言った、？！」
「え？うん……いや、かわいいから振ったやつ勿体ねえなと思ってさ」

え、なんか俺おかしなことでも言った？とでもいうような出水に私はただ唖然とするしかなかった。