【WT】出水彼女いるってよ。 (ページ12)

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牧田さんが職員室から出てくると、足並みを合わせて歩き出す。すると職員室までの道すがら同様長い沈黙が待っていると思った俺は牧田さんの次の言葉少し目を剥くことになる。

「出水のせいよ」
「なんでまた」
「…」
「だんまりかよ」

まさか開口一番に責められる言葉を頂くなんて露にも思っていなかった俺は理不尽だなと内心で少し呆れた。変わらず今も寄せられている眉間を見て今度はため息が出そうになった。「分かりやすい」っていうのはある意味長所だと思う。分かりにくいよりは断然いいし、絡みやすい。けれどそれは自分への好感度が保証されている相手のみで。

けれどもし、相手に嫌悪されていたり、少しでも負の感情があれば「分かりやすい」というのは面白いほど手のひらを返すのだ。絡みやすさは消え失せ鳴りを潜める。原因が分からないとなれば余計に厄介なものとなる。なんせ訳もわからず只管その相手から負の感情を浴び続け、話しかければ眉を顰められる。

「そう言えば俺に聞きたかったことはどうなったの」
「……それを考えてる」

まさかそれが理由ではあるまいな。俺が理不尽にも訳もわからず責められたのは。いや、問い質すまでもなく俺は自分の中を過ぎった可能性が紛れもない真実なのだろうと確信する。

こんなところではないだろうか。職員室に入るまでの顰めっ面で島田(担当の先生)と向き合い、なにそんな怖い顔してんだ的なことを身も蓋もなく言われたんだろう。だとしたら本当に理不尽だ。冤罪の域だ。身の潔白を証明してやりたいくらいだ。

「牧田さんさ別にそこまで深く考えずに気軽に聞けばいいじゃん。俺別に触れられたくないこととか特にないし」
「そう言う問題じゃ「それに」…」

「答える側もあんま真剣に考えられると答えづらいっていうか。答えがつまんなかった時なんて余計答えづれえし」

自分で言っててどこか言い訳じみた言い方に今度は牧田さんが呆れる番だった。そして俺が先程遮って言い切れなかった「そう言う問題じゃない」という言葉を繰り返す。

「つまんないなんて分からないじゃない」

「つまんねえよ
少なくとも俺の答えは」

何処か苛立っているようにも責めているようにも聞こえるその言葉にこめかみを抑えたくなった俺は思わず語気を強めた。意図せず出た言葉が思いの外冷たくて自分でも焦り、直様牧田さんの方を見て顔色を伺おうとしたのは条件反射だった。

「やっぱいい。聞かない」

そういい一瞥だけして、今度はきっぱりと
こう言った。

「出水って本当嫌味なやつよね」