【BEASTARS】シグナル (ページ3)

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「……へ？」

ルイのその一言にその空間全体が静まり返った

そんなこと言われ慣れてない私はつま先から耳の先まで血液が循環する音がして困ってしまった

何より刺さる視線はさっきまでなかった殺意が加わって全身が痛い

「…君を演劇部に誘えと言われたから朝から探してたんだ」

手は呆気なくパッと離され呆れた様子のルイがそう言うと、緊張が解けたのは私だけじゃないらしく

まわりの女子たちからも安堵の声が聞こえた

そらそうだ、長年探されるようなこともしてないしこんな友達もいない根暗な女がヒロインになんかになれるわけがない

そもそもそんなこと言われて、この後の学園生活を穏便に送れる確率は低い

てかなんで手なんて握ったんだ？

……というか問題はそこじゃない

｢え？なに？演劇部…？｣

はっきり聞こえてた癖に聞き間違いじゃないかと再度問い直してしまった

｢そうだ、君には演劇部の演劇チームに入ってもらいたい｣

謎に自信ありげな顔でそんなこと言われても困る

｢それに君には才能があると見越した、そのうちヒロイン役も君に回すだろう、あと……｣

……何を言っているんだ？

つらつらと何かを言っているがこちとらそんなことを冷静に聞ける体制は整ってないので視界は良好でも大きい耳は不調で鼓膜がシャットアウトしてしまう

何より演劇だと？

演劇はトラウマで微塵も身の回りに感じたくないしそもそも誰か多数に注目されるなんてもってのほかでアレルギーが出てしまうに違いない

そもそも友達なんていないのにいったい誰が私の存在を知らしめたっていうの？

｢～なんだが…おい、聞いているのか？｣

｢え？｣

いきなり目の前にズイっとルイの顔が寄ってきたところで自分が考えにふけりすぎて本当に全く話を聞いてなかったことに気がついた

｢あ、っと……演劇だっけ？｣

｢そうだ、入るだろう？もちろん｣

身長のせいもあるけど上から目線のルイの気迫に押されて少し後ろに引いてしまった

周りの視線が私の回答に注目して冷や汗が頬を伝って床に落ちた、アレルギーだって出てきた、全身が痒い

｢入らない｣

｢え？｣

生唾を1度飲み込んでから振り絞った声はカスカスで思ったよりちゃんと出なかった

｢に、入部しないです……ほな｣

何をパニクったのか私は気持ちの悪い慣れない笑顔で片手をヒラヒラとさせながら5歩後ずさって、全速力で逃げた

その時の私はとっても滑稽だっただろうなと、容易に想像ついた