謎の少女と少年

美幸ちゃんの過去（アーヤside） ページ20

田中:「でも、3人とも駄目だった…」

橘:「その時、姉のお腹には赤ちゃんが居たの。葵よ。
　 もうじき、産まれる頃だったわ。
　 誰もが、諦めていたわ。
　 でも、必死にお願いして診て貰ったら、生きていたの！
　 それで、先生が帝王切開で葵を助けてくれたの！
　 祖父母は、こっちにおいで。
　 そう言ってくれたわ。葵も居るし。
　 でも、他県に行かなくちゃいけない。
　 それは、嫌だった。わがままなのは分かってる。
　 でも、嫌だったの。
　 だから必死に説得して、
　 ここで、葵を育てることにしたの。」

田中:「元々、美幸は、
　 中学生から一人暮らしをする予定だったから、
　 もう家は完成してて、後は引っ越しをするだけだったんだ。」

アーヤ:「中学生で一人暮らしって出来るの？」

若武:「出来る。でも、条件がある。親が認める事だ。
　 話を聞くと、親は認めていたみたいだけど、
　 親が他界している場合は、
　 その書類を見せても、審査が通りにくい。
　 どうしたんだ？」


美幸ちゃんは、【ちょっと待って】そう言い、
隣の洋室に行って、引き出しから、
A4サイズの紙を出して、和室に戻ってきた。


橘:「はい。戸籍謄本よ。」


皆、食い入る様に見ていて、やがて、若武と上杉君が


若武:「まさか！」

上杉:「養子なのか？」

kz-若武,上杉,黒木以外:「嘘!?」

橘:「ええ、そうよ。
　 養子縁組に入っている知り合いに頼んで養子にして貰ったの。
　 ついでに、サインも。」

黒木:「前の苗字は？」

橘:「モリ。森林よ。」


さっきから、スマホを弄って
黙っていた黒木君が、
また、スマホを弄り始めた。


黒木:「出てきた！
　 殺害事件なら、ニュースに流れたはずだろ？
　 だから、【名前検索】してたんだけど全く出てこなくてさ、
　 それで、【森 美幸】で調べたら、出てきた。
　 辛かったら、見なくていいからな。」

橘:「建人。」

田中:「葵を寝かせてからな。」

ー数分後ー
田中:「いいぞ。」


そう言うと美幸ちゃんは、建人君の太ももの上に座って、
建人君は美幸ちゃんの手を握った。

橘:「いいわ。」

ー数分後ー
若武:「辛くないのか？」


控えめに、そして、弱々しく、聞いた。


橘:「正直言って、辛い。
　 でも、葵と建人が居るから大丈夫。
　 2人が、癒してくれるから。」


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