未練タラタラやん、俺もやけど。【白膠木簓】 (ページ16)

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Title 16 ページ16

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あの頃にもし戻れるのなら

後悔のない選択をしたい

立ち去らず彼を支えてあげられていたなら

結末はきっと変わっていた

ここまで年月が経ち、お互いに気まずくなることもなかったはずだ。

夜の街を疲れた顔で歩く人々は

不穏な空気の中立ち尽くしている私たちをギョッと見つめる

決して立ち止まる者はいないけれど

視線はとても熱く感じた。

「俺は、どうしたら許してくれるんや」

あんたが被害者の癖に。

最早私が惨めになってくるよ

当時の悲しみに耐えきれず仕事を退職して

新しい職場が見つかったと思えば仕事をしない

連中に囲まれ気付けば残業塗れ

何がしたかったのかと自分に問いたとして、

まともな答えは出ない。

この空白の2年はどう足掻いても人には説明出来ない

しょうもない人生、送ってきたんだな私って

「許すも何も、私は貴方を置いて逃げた」

「 ……… 」

「責められるのは私の方だよ」

「俺はそんなつもりやあらへん」

「漫才、面白かったよ。もう会うことは無いだろうから
それだけ伝えたかった」

彼の未来が見える、大物の芸能人になって

別の違う人と幸せになる。

名を売れば美人な芸人さんが必然と寄ってくるでしょ

何も、私みたいな貧相な女に合わせなくても良いだろう

────── 嗚呼、もう終わりだね簓

「じゃあね」

「まッ… 」

手を伸ばし、私を捕まえようとするけど空を切った。

行き場の失くした彼の手はどこにも行く宛てがない

私は彼から逃げるようにそのまま家まで走った

これでいい。これでいい

そう思わなきゃ自分の胸の痛さは紛れなくて

情けない気持ちは涙となって零れ落ちた

彼がどうか、幸せでありますように。

私じゃない誰かと、しあわせに……

「わたしが、幸せに、してやりたかったなあ…… 」

写真、捨てなきゃね

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