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第三十四話 ページ35

食器を片付けた後、僕らはまた図書館に戻ってきた。
 今度に渡されたのは一冊の絵本。大きめに印刷された平仮名が並び、同じページには淡いタッチで様々な生き物が描かれている。4本足の犬猫ばかりが描かれたそれは僕の顔よりも少し大きいくらいの表紙のサイズで、古ぼけていたけれど色褪せも少なく綺麗だった。


『それ、昔日ノ本語を勉強する時に大先生がふざけて買った本なんよ。一応使えるかなって…』
「………、あ、る…ひ?」
『!そうそう、早速読み始めてるんか!凄いなあ』


 流石に意味まではわからないが、音読することはできる。ノートに書き写して、えーみーるさんにイラストや身振り手振りで意味を教えてもらって。
 午後はずっとそんな感じで、休憩時間になる頃には僕はヘトヘトになっていた。
 慣れない言語を必死に覚えようとして脳がフル回転しているせいだろう、久し振りに、下手したら初めてっていうくらいに疲労感が凄い。


『ちょっと熱中しすぎたなあ。休憩しよか』
「んぁあー……つ、つかれた…」


 えーみーるさんが席を立った隙に机に突っ伏し、大きく息を吐く。

 …そうだ、意味を忘れないうちに僕の言語でも書いておかなきゃ。とは言っても、覚えたのは「おはよう」「いただきます」「ごちそうさま」くらいだけど…あと、「いぬ」と「ねこ」と「くま」。簡単な言葉のはずだけど、僕にとっては大いなる父達(=2(=(9$(→(05)の言語のように感じる。
 えーみーるさんの綺麗な字とは違う、なんだかぐにゃぐにゃした僕の字。その隣に、書き慣れた故郷の言葉を並べた。


『お待たせ、コーヒーと紅茶どっちが……って、これ』
「?」
『これ…うわ読めへん…なんて書いてあるん?』
「…?これのこと?えっと……おはよう(168♪)?」
『ごめんなんて?もう一回!』
おはよう(168♪)
『ら…らぅ?』


 えーみーるさんは赤っぽい半透明の液体の入った入ったカップを置いて、もう片方のカップを片手に真面目な顔をして聞いている。
 僕の故郷の言葉を繰り返す姿に、なんだか楽しくなってしまって、僕は指さされた文字をつらつら読み上げてみせた。


おはよう(168♪)…“おはよう”。」
『これがおはようなんやね?こっちは?』
いただきます(☆44(7°)、“いただきます”」
『ホンマに聞いたことない言語やなあ…』


 首を捻るえーみーるさん。僕は先生と生徒の立場が逆になった様に感じて、思わずくすくす笑った。

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ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います!多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン?なの初めて見ました!めちゃくちゃおもろいです!応援しとります!頑張ってください! (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ニノ | 作成日時:2022年9月14日 1時

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