第三十六話 em視点 ページ37
スランプ気味です。
＊＊＊
「よし、今日は此処まで…あ、ええと、“終わり”、ね。」
『んと…はあい』
教えたばかりの短い単語を述べると、それを正しく理解したらしくコウくんはぱたんとノートを閉じる。纏め買いしたまま収納の奥に眠っていた予備用だったが、役に立てた様で何よりだった。
久々に教鞭を取ったせいか少々肩が凝る。若さの特権とも言えるその吸収の早さについ夢中に成り、気付けば空は少々赤らんでいた。
手渡した絵本をぺらぺらと捲る彼を眺める。
性格は温和で素直、至って無害。少々気配に敏感な様だが、初対面で泣き出したあの脆さも考えるとごく普通の少年に見えた。…勿論、
ざっくり言えば動向を探る為に図書館に連れてきたが、彼に怪しい動きはない。勿論仕事の為に途中席を外したりもしたが、その間はロボロさんの班がカメラ越しに監視してくれており、そしてインカムからは特にこれといった情報は入ってこなかった。
「コウくん」
名前を呼ぶと、不思議そうな顔でこちらを見上げる。年の割に無垢すぎる気もするが、周りが
無防備に小さく首を傾げる様を見て、思わずふっと口元が緩んだ。
「その絵本はあげるから、今日はもう部屋に戻るとええよ。夕食の時間になったら呼ぶからね」
『ゆうしょく…はい。』
ジェスチャーも交えて客間に戻る様促すと、彼はやや曖昧に頷いてから席を立ち上がった。
ノートと絵本を手に持ち扉へ向かい、廊下に一歩出てから此方へ慌てた様に頭を下げる。
それに軽く会釈を返すと、パタン、扉は控えめな音を立てて閉まった。
「ふー……」
ガタンとやや行儀悪く椅子に座り、目元を指先で軽くマッサージする。実のところ、いつあの
極力機嫌を損ねない様に努めて、というか殆ど普段通りだが、まあ出来るだけ穏やかに丁寧に振る舞ったつもりだ。
そうしながら相手から言語のヒントを引き出すのは、本当に精神が擦り減った。他国の重役を相手にしているわけでもないのに、おかしな話だが。
「……あっ」
はっ、とある事に気がつく。
____問題の言語が書かれたノート、持ってかれてもうた！！
回収するつもりだったのに、と頭を抱えてから、仕方ないと疲労の滲む身体を起こした。
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ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います！多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (
レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン？なの初めて見ました！めちゃくちゃおもろいです！応援しとります！頑張ってください！ (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニノ | 作成日時：2022年9月14日 1時
