二粒。 ページ3
「……おじさんたちって、どこから来たの?」
少女が酔っ払いに問えば、酔っ払いは「遠い南の国からな!」とがなる。少女は「へーっ」と声を返し、そして南の国のいいところを聞き出す。そしてひと段落ついてから、ニッコリと微笑んだ。
「おじさん、この国にもいいものがいっぱいあるよ。だから今日は早く寝て、ぜひ観光してみてよ!」
酔っ払いはそれもそうだなと、ガハハと笑い、お勘定を済ませて店を去っていく。単純な客で良かったと、少女はため息をこぼした。
カウンターに戻れば、先ほどの女はちょうどコーヒーを飲み終わったようで、空になったカップを少女の目の前に押し出した。少女は言う。
「ご注文の品は、こちらでしょうか」
つかつかと歩いて、トイレの横の、古い扉の前に立つ。女はこくりと頷いた。少女は扉を押し開けて、中に入る。そこには底も見えぬような階段が、深く深く続いていた。
「あの、お店の方は大丈夫なんですか?」
「はい。他のものが見ておりますので」
気を紛らわせるように言った女の問いに少女は丁寧に答る。そばにあったろうそくに火をつけて、階段を降り始めた。湿っているので気をつけて。その言葉に、女はこくりと頷く。かつんかつんと、静かに静かに、音が響いた。
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「さて、」
少女は先ほどと同じように、明るく呟いた。にっこりと作られたその甘い、甘すぎる笑みに、女はぞわりと、身震いをする。この少女、どこか人間味がないのだ。「どの辺が?」と問われれば、それはさっぱりわからないけれど。
「ようこそ、便利屋TEARSへ!」
ようやっとたどり着いた、結局地下のどのくらいの場所にあるかわからない部屋の扉を、少女は堂々と開く。中には、木造りの小さな部屋。先ほどの地獄へ続ような階段とは打って変わって、それがまた気味悪くすらあった。
少女は中に歩いて、中央にある椅子に腰かけた。その前にあった小さな肘掛け椅子に、女を促す。女もおずおずとその椅子に腰かけた。
「さてさてあなたは、「欲望」のためにいくらつぎ込める?」
少女は快活に笑った。ニッコリと、甘く、甘く。女は身震いする。やはり、彼女のこの笑みは恐ろしくてならなかった。
「話は、それからだ」
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作者名:お好み焼き屋 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月11日 23時