一粒。 ページ2
「……えー!すごーい!」
酔っ払いの相手とは、なかなか簡単なものだ。相手の好きなこと、嫌いなこと、いま触れて欲しくないこと、触れて欲しいこと。その辺りを理解していれば、余裕で対処できるのだから。
それにしてもこれはどうなのだ。月のように儚い色の瞳を持つ少女はぼんやりと考える。時刻は午後4時、本来のお客は全く来ず、なぜか昼間っから、しかも健全なバーで酔いつぶれている頭のおかしな客の相手ばかり。ブラック企業で訴えてやってもいいかしら。
「嬢ちゃんもそう思うよなぁ」
同意を求めてくる酔っ払いに、思う思う〜などと適当に相槌を打っていれば、カランカランという音ともに、若い女性が入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
そう言ってニコリと笑うと、女は思いつめた顔でぺこりと頭を下げた。彼女は一番端のカウンター席に腰をかけて、ブラックコーヒーを注文する。そして呟くように言った。
「このコーヒーには砂糖がいくら入れればいいのかしら」
少女はにんまりと甘い笑みをこしらえて、「お好みで」と同じように呟くように返答する。すると女は、小さく瞬きをしながら「それなら二つ」と言うのだ。
少女は棚から二つの角砂糖を取り出して、コーヒーの中にぽちょんと落とす。そして女がコーヒーを飲み終えるまで、酔っ払いと話し込んでいた。
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作者名:お好み焼き屋 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月11日 23時