彼女が太陽 ページ3
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『蜜柑ちゃん…………蜜柑ちゃん……………』
随分と長い時間だったように思う。抱きついて、一緒に転んでしまった蜜柑ちゃんの上から、ずっと動こうとはしなかった。
「和奏ちゃん蜜柑ちゃん…君たちが無事でよかった」
そろそろ蜜柑ちゃんが潰されちゃうよ?と鳴海先生が首を傾げて教えてくれるまで、離さなかった。
「立てる?まだ見えてないん?」
『ううん。アイマスクしてるだけ。外したら見えるみたい。でも一応今日だけ』
「じゃあ明日!和奏ちゃんのお帰りパーティーやるな!」
見えなくても分かる。きっと満面の笑みで言ってくれているだろう。あんな事件があったのに、ペルソナや危険能力系の人と戦って倒れた後でも、蜜柑ちゃんはいつだって太陽でいてくれる。
彼も、蜜柑ちゃんのそういうところが好きなんだろうな。
「さて、2人を寮まで送りますか!帰ろう」
ザアアアッ
急に冷たい風が強くなって、冬の残りの枯れ葉が舞い上がった葉音で包まれる。
「蜜柑ちゃんを棗くんのパートナーにしてよかった!」
「ウチが何て?鳴海先生なんて言うたん!?」
「君なら棗くんの太陽になってくれるかもって」
「何!?聞こえんよ」
何も見えない。
鳴海先生の表情も、辺りの葉の舞い上がり方も。
でも、ずっと目が見えない生活で、耳が過敏になっていたのは自分では気づいていた。問題ないと思って誰にも言わなかったけれど。
『……………っ』
「頑張ったねって言ったんだよ♡」
いつの間にか止んでいた風と音。
辛いことはない。今更。
今までもずっと思っていたから。彼女、蜜柑ちゃんが日向くんの太陽で、彼もその存在を必要としていることに気づいてたから。
「これで少しは肩の荷が降りたかな♡」
「ひゃーーー!」
蜜柑ちゃんの楽しそうな悲鳴が聞こえ、ハッと気づいたその時だった。
チュドーーーーン
「ぎゃーーーーー!!」
蜜柑ちゃんの悲鳴ととともに、少し離れたところから急に熱風!?いきなり爆発音みたいな音とともに身体が吹き飛ばされそうに、
「勝手に抱くな」
突然現れたその声に、鼓動がドクンと脈を打つ。
「何が肩の荷だ。似合わねーこと言ってんな」
今の会話を聞いていたのか。ううん聞こえてたんだ。日向くんも鳴海先生と同じように思ってるんだろう。哀しくない。哀しくないから、今はアイマスクが助けてくれているかもしれない。
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y - 更新待ってます🥲 (4月12日 22時) (レス) @page6 id: 3d214789d3 (このIDを非表示/違反報告)
る - 続き待ってます🥲 (11月4日 23時) (レス) id: 6aaa788cce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 | 作成日時:2023年8月26日 1時