鬼は鬼 ページ3
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「久しぶりだな、Aちゃん!」
「とんだ別嬪さんになったもんだ!」
通された座敷には、
武州の頃にお世話になった近藤さんがいた。
ガハハと笑って、
温かく迎え入れてくれる姿は、
あの頃と変わらない。
「それにしてもどうして江戸に?」
『仕事で江戸に住むことになったの』
「そうか!なんの仕事なんだ?」
『…接客業。』
「接客業か!」
「Aちゃんにピッタリの職だな!」
近藤さんに深く聞かれなくてよかった。
接客業、といっても夜の仕事だ。
江戸一のキャバ嬢になる為、
私は此処に来たんだ。
「Aは何処に住んでんでィ」
『あ、えっと…暫くはホテルかな』
「宿無しか、いい気味じゃねーか」
『ほんと総悟ったら嫌な性格ね』
とりあえず家が見つかるまでは
ホテル暮らしの日々。
それに、
職もまだまだこれから見つけるんだ。
江戸に行く、
思い立った日が今日だった。
別に計画を持ってきた訳じゃない。
だから、まだ…
私の江戸での生活は真っ白だった。
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「じゃあ、家が決まるまで此処に住めばいい」
「部屋は結構空いてるんだし!」
「なぁ、トシ!」
近藤さんの言葉に、
ビクッと肩が震える。
視線を一瞬、
壁に寄りかかるトシに向ける。
鋭い眼付きで、
フゥっと息を吐き、
こう、言った。
「近藤さん、ここは旅館じゃねェんだ」
「そんなことできる訳ないだろ」
鬼は、やっぱり鬼だった。
「トシ、でもAちゃんが困ってるんだから…」
「江戸に来たのも宿が無いのも、Aの勝手だ」
「俺はそんなこたァ知らねェよ」
トシの冷たい言葉を聞き、
自分の決心が更に固まった。
_ 絶対に鬼を哭かせてみせる。
『…もう、大丈夫だから。』
『私、帰ります。』
「そ、そうか、?」
「じゃあ…総悟送って行ってあげてくれ」
「へーい」
私が鬼に会って決心が揺らぐんじゃないか。
そう不安で仕方なかったけど、
そんなことは1ミリも心配なかった。
憎い。
あの男が。
憎い。
準備を終えた総悟が門に来る。
江戸、
特にかぶき町の方は治安も悪いというため
剣を携えた総悟がやって来る。
「行きやすぜ」
気怠そうに声をかけてくれた
総悟の背中に一言。
『…何処に』
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結音(プロフ) - 早く続きみたいです! (2020年8月31日 22時) (レス) id: 7ba217637d (このIDを非表示/違反報告)
愛望(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!!続き気になります!頑張ってください! (2020年8月16日 22時) (レス) id: 30b22dab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あー | 作成日時:2020年8月4日 22時