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「つ、疲れた……!」
「あはは、随分疲れた顔ねぇA」
今日の午後はオフだったため、そのまま真っ直ぐ帰宅した。
いつもならいない時間にお母さんがいて、声を出して驚くと共に
今日は早く終わるとか言ってたな、と腑に落ちた。
私のげんなりとした顔が面白かったのか、キッチンで夕食を作りながら
げらげらと笑うお母さん。
ほんの少しカチンときたが、最近よく笑うお母さんを見て微笑ましくなった。
「今日の夜ご飯は?」
「Aの好きなオムライスだよー」
「やったー! 制服着替えたら手伝うね」
「うん。ありがとう」
お母さんの笑顔をしっかりと見て、リビングを後にした。
***
パタンッ
自分の部屋の扉を閉めてから、ベッドにダイブした。
制服のまま転がったから、服が皺だらけになってしまうな。
そんなことも頭の片隅に放り投げ、両腕で視界を遮り、ゆっくり深呼吸する。
「疲れたぁ〜」
腹の奥から疲れを取り出し、少し体が軽くなった。
このまま寝てしまおうかとも思ったが、今は制服姿。
それに、お母さんに手伝いに行くと約束してしまった。
─────約束してしまったからには、守らねば。
鉛の様に重い体を無理やり起こし、制服から私服に着替えた。
***
「お母さん。卵焼いちゃうよ?」
「うん。お願い」
卵を溶き終え、熱々のフライパンに流し込む。
ジュワァ…と食欲をそそる音がすれば、完璧だ。
隣をちらりと見ると、お母さんは真剣に野菜の型抜きをしていた。
「……お母さん」
「ん? なぁに?」
「最近、笑う様になったね」
「え!? あ、そ、そうかしら……?」
型抜きをしている手を止め、頬を赤らめるお母さん。
これは、もしや……。
「お母さん。私は反対なんかしないよ、“再婚”」
「……っでも__」
「お母さんが、本っ当にその人でいいと思ったなら、いいと思うよ」
「A……。ありがとう……!」
瞳に涙を浮かべながら微笑むお母さん。
実は幼い頃、両親が離婚したのだ。
勿論、私はお母さんについて行った。
あの状態でお父さんなんか選んだら、私は一生不幸者だと思う。
2番目のお父さん、か……。
お母さんを独り占めできないから、本当は反対だけど。
でも、お母さんが笑っていてくれるのなら、私は大賛成。
お母さんの心地よい鼻歌に耳を傾けながら、ゆっくり手を動かした。
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れむ(プロフ) - 桜月さん» 素敵なお言葉、ありがとうございます…!! 全力で頑張ります!୧(⑉•̀ㅁ•́⑉)૭✧ (2022年6月11日 13時) (レス) id: d99c936a62 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - すごく面白かったです!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってくださいッッ(*゚∀゚) (2022年6月11日 11時) (レス) @page5 id: 5b22c7453f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れむ | 作成日時:2022年6月9日 20時