【芥川龍之介】語彙力のない私が文豪世界へトリップした【文スト】

６話 ページ8

Aを見て、可愛いと思った。

出会いは突然すぎるし、成り行きにもほどがあるし、なにより、僕たちのことをかなり知っているし。

不審感がないと言ったら嘘にはなるが、
悪巧みを出来るようにも見えない。
真実を話していることはわかる。


そしてなにより、彼女に惹かれた。

理由とか、そういう明確なものはない。

けれど、彼女を捨て置くわけにもいかず、勝手に口が「彼女だ」なんて、言っていた。


こんなこと、僕らしくないことはわかってる。


……不思議な気分だ。


「……芥川さん」

帰路についた裏路地で３歩ほど離れた位置から声をかけられる。


「…なんだ」

努めて、いつも通りの自分で振る舞う。

「助けてくれて、ありがとう。芥川さんが拾ってくれなかったらこの広い横浜でどこに向かうこともできずにのたれ死んでたかも」

地図も読めないし、お金だってちょっとしかもってない。

それに向こうの通貨とこっちの通貨は同じ？なのかしら？
たぶん同じだとおもうけど……

「…………別に。僕は僕の好きにしただけだ」

「でも、私は助かったから。だから、ありがとう」

その笑顔に苦しくなるのは何故なのか。
僕には、まだ、わからない。

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