52話_ ページ8
イザナが17の時、
当時不仲だったリド領とスイ領の間に城がほしいと言い出したことがあった。
両領主からは貢物が届き、イザナはそれを受け取った。
お互いに劣るわけにはいかないと、領民を苦しめていても、貢物がなくなることはなかった。
ゼンはイザナの行為に反感(らしきもの)を抱いていた。俺も初めはおかしく思った。
真相を知るものはその時点ではほとんどいなかっただろう。
「イザナ、そろそろいいんじゃないか?ほんとに使い物にならなくなるぞ」
両家の臣下が来て何度もイザナを止めようとしていたが、それも途絶え始めた頃、イザナはゼンを連れて両領主の元に訪れていた。
王城に帰ってきてイザナは、
「領民を腐らせる領主など影で討たれればいい」
と、ゼンに言っていたらしい。
「イザナ、報告書。証拠も抑えてある。いつでも大丈夫だよ」
「そうか…」
俺がイザナに頼まれていたのは両領主の悪事を暴くこと。
両領主はイザナの訪問から無茶が無くなり、その分裏の金を使うようになっていたのだ。
当然、両領主は失脚。
まわりは、イザナを流石だと褒め称え、その頭脳を恐れる人もいた。
「イザナ、お前は側近をつけないのか?」
「そうだな…では、Aがなってくれるか」
ほんの興味本位の問いに、イザナは答えた。
その眼はいまでも覚えてる。
陛下とも、ゼンの眼とも違う。
本意を隠そうとする中での、隠せないほどの真剣さ。
「お前が、俺を必要としているのなら」
その時首から下げていたのは、藤色の無地の身分証。
「そうだな。そのときは力を借りるとしよう」
そういって、イザナは笑った。
おれがこの地位を動くことができないのは知っているのだろう。
知らなくても、察しているのか。
「謝ります、兄上。俺は、兄上が領主らを利用しているのかと思ってました」
「違ったのか?俺は楽しんでいたつもりだが」
「…兄上は、奴らに恨まれたりしないでしょうか」
うつむくゼンを、弓を引くイザナを、鮮明に思い出せる。
「いずれ斬りかかってくるかもな」
「兄上!」
「その時盾になる者が誰もいなければ俺もそれまでの男ということだ」
俺はこの時2人の護衛としてこの場にいた。
2人の会話に入るつもりも、そもそもいることも知らなかっただろうな
「ゼン、周囲に主君の子だと認めさせねば、己にも自覚は生まれないぞ」
イザナはその覚悟を決めるのが早かった。
そして、聡明だった。
この時から、イザナは国政を担うようになり始める。
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レイ(プロフ) - うさ丸さん» 更新遅くなってすみませんっ!コメントありがとうございます!なかなか続きをかけてないんですが、これは完結まで書きます!まだこういうふうに更新遅くなる日が続くと思いますがこれは書き続けたいと思っていますっ頑張りますっ!本当にありがとうございます!! (2016年5月9日 7時) (レス) id: af1a1b1ac0 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸 - え、消しちゃうんすか!? (2016年5月2日 22時) (レス) id: 93ddfd5243 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸 - 続き気になるっすね!更新頑張ってくださいっす! (2016年5月1日 21時) (レス) id: 93ddfd5243 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 御月刃さん» コメントもありがとうございます!自分なりにこれからも頑張ります!! (2015年9月13日 8時) (レス) id: af1a1b1ac0 (このIDを非表示/違反報告)
御月刃(プロフ) - 続編おめでとうございます!頑張ってください! (2015年9月12日 16時) (レス) id: 7136332561 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2015年9月9日 12時